第193回国会で成立した主な改正法等の概要(企業関連)
◆民法の一部改正
・消滅時効について、短期消滅時効の特例をいずれも廃止するとともに、消滅時効の期間について、原則として権利行使が可能であることを知った時から5年に統一する。
・法定利率について、現行の年5%から年3%に引下げた上で、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入する。
・事業用融資の債務の保証契約は、保証人になろうとする者が個人である場合には、主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役等である場合などを除き、公証人が保証意思を確認しなければ、効力を生じないものとする。
・不特定多数の者を相手方とする定型的な取引に使用される定型約款に関し、定型約款を契約内容とする旨の表示があれば個別の条項に合意したものとみなすが、信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項は無効とすることを明記するとともに、定型約款を準備した者が取引の相手方の同意を得ることなく定型約款の内容を一方的に変更するための要件等を整備する。
・意思能力を有しなかった当事者がした法律行為は無効とすること、賃貸借契約の終了時に賃借人は賃借物の原状回復義務を負うものの、通常の使用収益によって生じた損耗等については義務の範囲から除かれることなど、確立した判例法理等を明文化する。
※一部の規定を除き、公布の日(平成29年6月2日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行。
◆中小企業信用保険法等の一部改正
・大規模な経済危機、災害等の事態に際して、予め適用期限を区切って迅速に発動できる新たなセーフティネットとして危機関連保証を創設する(従来の保証限度額とは別枠で最大2.8億円の保証を実施)。
・特別小口保険の付保限度額を拡充する(1,250万円→2,000万円)。
・創業関連保証の付保限度額を拡充する(1,000万円→2,000万円)。
・事業承継を一層促進するため、法の認定を受けた中小企業の代表者個人が承継時に必要とする資金(株式取得資金等)を信用保険の対象とする。
※公布の日(平成29年6月14日)から起算して1 年を超えない範囲内において政令で定める日から施行。
◆介護保険法等の一部改正
・第2号被保険者(40~64歳)の保険料は、介護納付金として医療保険者に賦課しており、各医療保険者は、介護納付金を2号被保険者である「加入者数に応じて負担」しているが、これを被用者保険間では「報酬額に比例した負担」とする(激変緩和の観点から段階的に導入)。
※平成29年7月1日から施行。
・介護給付及び予防給付について、世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする。
※平成30年8月1日から施行。
◆住宅宿泊事業法
・住宅宿泊事業を営もうとする場合、都道府県知事への届出が必要。
・年間提供日数の上限は180日とし、地域の実情を反映する仕組み(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)を導入。
・住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(宿泊者の衛生の確保の措置等)を義務付け。
・家主不在型の住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊管理業者に住宅の管理を委託することを義務付け。
※一部の規定を除き、公布の日(平成29年6月16日)から起算して1 年を超えない範囲内において政令で定める日から施行。
◆不動産特定共同事業法の一部改正
・空き家・空き店舗等の再生事業に地域の不動産事業者等が幅広く参入できるようにするため、出資総額等が一定規模以下の「小規模不動産特定共同事業」を創設する。
・クラウドファンディングに対応した環境整備として、契約成立前の投資家への書面交付等について、インターネット上での手続に関する規定や、インターネットを通じて資金を集める仕組みを取り扱う事業者について、必要な業務管理体制に関する規定を整備。
※一部の規定を除き、公布の日(平成29年6月2日)から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行。