第204回通常国会において4月以降に成立した主な改正法等の概要
◆民法等の改正及び相続土地国庫帰属法
・不動産を取得した相続人に対して取得を知った日から3年以内の相続登記や、所有権の登記名義人に対して住所等の変更日から2年以内の変更登記の申請を義務付けるとともに、それらの手続の簡素化・合理化を行う。
・相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させることが可能となる制度を創設する。
・その他、*所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度の創設、*不明共有者がいる場合に公告等をした上で、共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度の創設、*長期間放置後(相続開始から10年経過)の遺産分割は画一的な法定相続分で行う仕組みの創設などを講じる。
・施行は公布(令和3年4月28日)から2年以内の政令で定める日(相続登記の申請義務化関係は公布後3年以内、住所等変更登記の申請義務化関係は公布後5年以内の政令で定める日)。
◆健康保険法等の改正
・後期高齢者医療の被保険者のうち、現役並み所得者以外の被保険者であって一定所得以上(単身世帯は課税所得28万円以上かつ年収200万円以上、複数世帯は後期高齢者の年収合計320万円以上)の場合は、窓口負担割合を2割とする。・その他、*傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間がある場合はその分の期間を延
けられるよう支給期間の通算化を行う、*育児休業中の保険料の免除要件に月内に2週間以上の育児休業を取得した場合を加える、などの措置を講じる。
・施行は令和4年1月1日(後期高齢者の窓口負担の見直しは令和4年10月1日から5年3月1日の間に政令で定める日、育児休業中の保険料免除要件の見直しは令和4年10月1日)。
◆育児・介護休業法等の改正・男性の育児休業取得促進のため、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる育児休業の枠組みを創設する。
・妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講じることを義務付ける。・その他、*労働者数1,000人超の事業主に対し育児休業の取得状況の公表を義務付ける、*育児休業を分割して2回まで取得が可能、*有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」を廃止など講じる。
・施行は令和4年4月1日(男性の育児休業取得促進のための枠組み創設や、育児休業の分割取得は公布(令和3年6月9日)から1年6月以内に政令で定める日)。
◆産業競争力強化法等の改正
・カーボンニュートラル実現に向けた事業者の計画を主務大臣が認定し、脱炭素化効果が高い製品の生産設備・生産工程等の脱炭素化を進める設備に対する設備投資税制や、利子補給等を置する。
・デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革の計画を主務大臣が認定し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に必要な投資に対する投資促進税制や、低利融資を措置する。
・赤字であってもカーボンニュートラル、DX、事業再構築等に取り組む企業に対する繰越欠損金の控除上限の引上げ、低利融資を措置する。
・経営革新計画・経営力向上計画について、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群を支援施策の対象に追加する。
・事業承継に先立ち実施するデューデリジェンス等を経営力向上計画の対象とし、中小企業経営資源集約化税制(M&A後のリスクに備える準備金・設備投資・雇用確保の促進)を措置する。
・一部株主が所在不明であるため事業承継が困難となっている旨の認定を受けた中小企業者について、所在不明株主からの株式買取り等の手続きに必要な期間を5年から1年に短縮する。
・施行は一部を除き、公布(令和3年6月16日)から3月以内に政令で定める日。
◆特定商取引法・預託法等の改正
・通販において定期購入でないと誤認させる表示等に対する罰則化や、その表示によって申込みをした場合に取消しを認める制度を創設する。
・送り付け商法について、送付した事業者が返還請求できない規定の整備等を行う。
・販売を伴う預託等取引を原則禁止とし、罰則を規定するほか、原則禁止の対象となる契約を民事的に無効とする制度を創設する。
・施行は一部を除き、公布(令和3年6月16日)から1年以内に政令で定める日。