第211回通常国会において4月以降に成立した主な改正法等(企業関係)
◆フリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)
・特定受託事業者(従業員を使用しないもの)に対し業務委託をした特定業務委託事業者(業務委託事業者で
あって従業員を使用するもの)について、次のような措置を講じる。
特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、給付の内容、報酬の額等を書面又は電磁的方法により明示しなければならない(従業員を使用していない事業者が業務委託をした場合も同様)。
特定受託事業者の給付を受領した日から60日以内の報酬支払期日を設定し、支払わなければならない(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)。
・政令で定める期間以上行う業務委託をした場合は、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに受領の拒否や報酬の減額などをしてはならない。
・継続的業務委託を中途解除する場合等には、原則として30日前までに予告しなければならない。
※公布日(令和5年5月12日)から1年6ヵ月以内に施行。
◆景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の改正
課徴金の納付を命じる場合において、対象となる違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対して課徴金の額を加算(1.5倍)する規定を新設する。
・優良誤認表示・有利誤認表示に対し、直罰(100万円以下の罰金)を新設する。
優良誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が是正措置計画を申請し、内閣総理大臣から認定を受けた場合は、措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けない制度を導入する。
・特定の消費者へ一定の返金を行った場合に課徴金額から当該金額が減額される返金措置について、返金方法として第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)も可能とする。
※一部の規定を除き、公布日(令和5年5月17日)から起算して1年6ヵ月以内に施行。
◆中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の改正
経営者の個人保証を求めない融資を中小企業信用保険の付保対象とし、無担保保険等において、一定の要件(法人から代表者への貸付け等がないこと、財務諸表を提出していること等)を満たしている場合に経営者保証を求めないこととする。
・危機関連保証について、指定期間中に認定申請が行われていれば利用できるように適用要件を緩和する(現在は融資が実行されていることが条件)。
・政府が保有する商工中金の株式を全部処分し、議決権株式の株主資格の対象から政府を削除するとともに、株式を処分した後も引き続き危機対応業務を的確に行うための規定の整備等を行う。
※一部の規定を除き、公布日(令和5年6月16日)から1年以内に施行。
◆不正競争防止法等(商標法、意匠法、特許法などを含めた知的財産関連6法)の改正
商標法について、先行商標権者の同意があり出所混同のおそれがない場合には、他人の登録商標と類似する商標を登録可能とする。また、氏名を含む商標も一定の場合には、他人の承諾なく登録可能にする。
・意匠法について、創作者等が出願前にデザインを複数公開した場合の救済措置を受けるための手続の要件を緩和する。
・不正競争防止法について、デジタル空間における他人の商品形態を模倣した商品の提供行為も不正競争行為の対象とする。また、ビッグデータを他社に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求等を可能とするほか、損害賠償訴訟で被侵害者の生産能力等を超える損害分も使用許諾料相当額として請求を可能とする。
特許法、実用新案法及び意匠法について、一定の場合に特許権者の意思によらず他者に実施権を認める裁定手続で提出される書類に営業秘密が記載された場合に閲覧制限を可能にする。
・特許法及び工業所有権特例法について、在外者へ査定結果等の書類を郵送できない場合に公表により送付したとみなすとともに、インターネットを通じた送達制度を整備する。
※一部の規定を除き、公布日(令和5年6月14日)から1年以内に施行。
◆著作権法の改正
著作物等の利用の可否に係る著作権者等の意思が確認できない場合の著作物等の利用に関する裁定制度を創設する。
著作権等の侵害者が譲渡した物の数量等に基づく損害額の算定について、著作権者等の販売等の能力を超える数量等がある場合でも、これらの数量に応じた著作権等の行使につき受けるべき金銭に相当する額を損害額に加えることができる。
※一部の規定を除き、公布日(令和5年5月26日)から3年以内に施行。