令和2年4月から中小企業にも適用される「時間外労働の上限規制」
◆労働基準法における労働時間の定め
労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間・1週40時間以内とされており、これを「法定労働時間」といいます。また、休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされており、これを「法定休日」といいます。
法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や法定休日に労働させる場合には、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長への届出が必要となります。
これまで、36協定で定める時間外労働については、厚生労働大臣の告示によって、上限の基準が定められていましたが、罰則による強制力がなく、また特別条項を設けることで上限無く時間外労働を行わせることが可能となっていました。
◆「時間外労働の上限規制」の主な内容
1.「時間外労働の上限規制」の導入によって、法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。
2.臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を超えることはできません。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4カ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」が全て1月当たり80時間以内・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヵ月が限度3.上記に違反した場合には、罰則(6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
※特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に時間外労働と休日労働の合計は、月100時間末満、2~6か月平均80時間以内にしなければなりません。例えば、時間外労働が45時間以内に収まって特別条項にはならない場合であっても、時間外労働44時間、休日労働56時間、のように合計が月100時間以上になると違反となります。
◆経過措置
上限規制は、施行後(中小企業の場合は令和2年4月1日以後)の期間のみを定めた36協定に対して適用されます。施行前と施行後にまたがる期間の36協定を締結している場合には、その協定の初日から1年間は引き続き有効となり、上限規制は適用されません。そのため、その協定の初日から1年経過後に新たに定める協定から上限規制に対応することになります。
◆上限規制の適用が猶予・除外となる事業・業務◎令和6年3月31日まで適用が猶予される事業・業務
建設事業、自動車運転の業務、医師、鹿児島・沖縄砂糖製造業※は令和6年3月31日まで適用が猶予されます。
※鹿児島・沖縄砂糖製造業は、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内とする規制のみ適用が猶予されます。
◎適用が除外される業務
新技術・新商品等の研究開発業務については、上限規制の適用が除外されています。
※1週間当たり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた労働者に対しては、医師の面接指導を義務付け、事業者は面接指導を行った医師の意見を勘案し、必要があるときには就業場所の変更や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講じなければなりません。
◆36協定の締結に当たってのポイント
①「1日」「1カ月」「1年」のそれぞれの時間外労働の限度を定める必要があります。
②1年の上限について算定するために、協定期間の「起算日」を定める必要があります。
③時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内とすることを協定する必要があります。
④限度時間(日15時間・任360時間)を超える時間外労働を行わせることができるのは、通常予見することのできない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合に限ります。
※臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合の事由は、「業務の都合上必要な場合」
「業務上やむを得ない場合」など、恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものは認められません。