平成27年4月から改正されるパートタイム労働法
「パートタイム労働法」では、同じ事業所で働いている、いわゆる正社員に比べ、1週間の所定の労働時間が短い人たちのことを、「パートタイム労働者(短時間労働者)」としています。いわゆる「パート」のほか、「アルバイト」「嘱託」「臨時社員」「準社員」など呼び方は様々でも、上記の条件に当てはまれば「パートタイム労働者」として、パートタイム労働法の対象となります。
◆主な改正点のポイント
1.パートタイム労働者の公正な待遇の確保
◎正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者の対処範囲の拡大
正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働法については、これまで、(1)職務内容が正社員と同一、(2)人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一、(3)無期労働契約を締結しているパートタイム労働者であることとされていましたが、改正後は、(1)、(2)に該当すれば、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も正社員と差別的取扱いが禁止されます。
例えば、担う仕事の内容や責任の範囲が正社員と同様で、人事異動や転勤などについても正社員と同様に処遇されるパートタイム労働者については、雇用期間に6ヶ月や1年などの期限があっても、「正社員との差別的取扱い」が禁止される対象となります。
◎「短時間労働者の待遇の原則」の新設
広くすべてのパートタイム労働者を対象にした「短時間労働者の待遇の原則」も新たに設けられました。これは、パートタイム労働者と正社員との待遇を違うものにする場合は、仕事の内容や人材活用の仕組み、そのほかの事業を考慮して、不合理であってはならないというものです。
ほかにも、「通勤手当」という名称であっても、距離や実際にかかっている経費に関係なく、一律の金額を支払っている場合のような、職務の内容に密接に関連して支払われているものは、正社員とのバランスを考えつつ、パートタイム労働者の仕事の内容や成果、意欲、能力、経験などを勘案して決定するように努めることとされました。
2.「パートタイム労働者」の納得性を高める
◎事業主による説明義務の新設
改正パートタイム労働法では、パートタイム労働者を新たに雇った場合や契約更新をした場合、賃金制度や福利厚生、正社員転換制度などについて、事業主はパートタイム労働者に分かりやすく説明しなければならないこととなりました。
また、事業主は、説明を求めたことを理由に、パートタイム労働者に対して、解雇や懲戒処分といった不利益な取扱いをしてはならない、それを恐れてパートタイム労働者が説明を求めることができないなどがないようにする、とされました。ほかにも、パートタイム労働者が親族の葬儀などのために勤務しなかったことを理由に解雇などをしてはならないとされました。
◎パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設
事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するための体制を整備しなければなりません。例えば相談窓口となる担当者を決めて対応させたり、事業主自身が相談担当者となって対応したりすることを指します。これには事業主が責任者を決めて相談実務を外部委託することも含まれます。
そして、パートタイム労働者を雇い入れたとき(契約を更新した場合も含みます)には、事業主は「相談窓口」(担当者名、役職、担当部署など)を文書の交付により、分かりやすく知らせなければなりません。
3.パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
パートタイム労働法にはパートタイム労働者に関する雇用管理を改善する規定が示されており、それらに違反したままにしている事業主に対しては、構成労働大臣による改善勧告が行われますが、勧告に従わない場合は、厚生労働大臣はその事業主の名前を公表できるようになりました。
また、パートタイム労働法で定められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした事業主には、20万円以下の過料に処されることとなりました。