平成28事務年度における相続税の調査状況と申告に関する基礎
◆平成28事務年度における相続税の調査状況の概要
相続税の実地調査は、平成26年に発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案等について実施されました。
◎実地調査件数及び申告漏れ等の非違件数
実地調査の件数は12,116件(平成27事務年度11,935件)、このうち申告漏れ等の非違があった件数は9,930件(同9,761件)で、非違割合は82.0%(同81.8%)となっています。
◎申告漏れ課税価格
申告漏れ課税価格は3,295億円(同3,004億円)で、実地調査1件当たりでは2,720万円(同2,517万円)となっています。
※「申告漏れ課税価格」は、申告漏れ相続財産額(相続時精算課税適用財産を含む)から、被相続人の債務・葬式費用の額(調査による増減分)を控除し、相続開始前3年以内の被相続人から法定相続人等への生前贈与財産額(調査による増減分)を加えたもの。
◎申告漏れ相続財産の金額の内訳
申告漏れ相続財産の金額の内訳は、「現金・預貯金等」1,070億円(同1,036億円)が最も多く、続いて「有価証券」535億円(同364億円)、「土地」383億円(同 410億円)の順となっています。なお、構成比では「現金・預貯金等」33.1%、「有価証券」16.5%、「土地」11.8%、「家屋」1.7%、「その他」36.3%となっています。
◎追徴税額
追徴税額(加算税を含む)は716億円(同583億円)で、実地調査1件当たりでは591 万円(同489万円)となっています。
◎重加算税の賦課件数
重加算税の賦課件数は1,300件(同1,250件)、賦課割合は13.1%(同12.8%)となっています。
◆相続税の申告に関する基礎
被相続人から相続などによって財産を取得した人それぞれの課税価格の合計額(相続税が課される財産の価額から、相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用の価額を差し引いた金額)が、遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、その財産を取得した人は、相続税の申告をする必要があります。
相続税の申告が必要となる場合には、相続の開始があったことを知った日(通常の場合は被相続人の死亡の日)の翌日から10ヵ月以内に申告書を提出しなければなりません。
◎相続税の課税対象となる主な財産
(1)被相続人が亡くなった時点において所有していた財産
①土地、②建物、③株式や公社債などの有価証券、④預貯金、⑤現金などのほか、金銭に見積もることができる全ての財産が相続税の課税対象となります。
なお、被相続人名義以外の財産については、名義に係らず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。したがって、被相続人が購入(新築)した不動産でまだ登記をしていないものや、被相続人の財産と認められる預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で家族の名義や無記名のものなどの被相続人名義以外のものも、相続税の申告に含める必要があります。
(2)みなし相続財産
被相続人の死亡に伴い支払われる「生命保険金」(被相続人が負担した保険料に対応する部分に限る)や「退職金」などは、相続などによって取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。ただし、「生命保険金」や「退職金」のうち、一定の金額までは非課税となります。
(3)被相続人から取得した相続時精算課税適用財産
被相続人から生前に贈与を受け、その際に相続時精算課税を適用していた揚合、その財産は相続税の課税対象となります。
(4)被相続人から相続開始前3年以内に取得した暦年課税適用財産
被相続人から相続などによって財産を取得した方が、被相続人が亡くなる前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(上記(3)を除く)は、相続税の課税対象となります。