平成30年度税制改正における「小規模宅地の特例」の見直し
◆小規模宅地等の特例の概要
個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。
なお、相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、この特例の適用を受けることはできません。
平成30年度税制改正において、小規模宅地等の特例について、次の見直しが行われました。
◆持ち家に居住していない者(いわゆる「家なき子」)に係る特例の対象者の範囲の見直し
特定居住用宅地等の特例(被相続人等の居住の用に供されていた宅地等について、330㎡まで80%減額)は、被相続人に配偶者又は同居親族(法定相続人に限る)がいない場合で、相続開始前3年以内に国内にある自己又は自己の配偶者が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがない方であれば、同居していない親族でも特例の対象者となります。
この持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者が除外されます。
1.相続開始前3年以内に、3親等内の親族又は特別関係のある法人が所有する国内の家屋に居住したことがある者
2.相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
◎適用時期
上記の改正は平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
なお、経過措置により、平成30年3月31日において、改正前の要件を満たしていた宅地等を、平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得した場合は特例の適用が認められます。
◆貸付事業用宅地等の範囲の見直し
貸付事業用宅地等※の特例(被相続人等が貸付事業の用に供していた宅地等について、200㎡まで50%減額)について、貸付事業用宅地等の範囲から、「相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等」が除外されます。
ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものは除かれます。
※「貸付事業」とは、「不動産貸付業」、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。
◎適用時期
上記の改正は、平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
ただし、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については、適用しません。
◆特定居住用宅地等に係る取扱い
介護医療院※に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地地等について、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例が適用されます。
※介護医療院とは、平成30年4月より創設された新たな介護保険施設で、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とし、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」としての機能とを兼ね備えた施設。
◎適用時期
上記の改正は、平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。