令和3年4月以降の価格表示は「総額表示」が必要に
◆総額表示義務の概要と特例
平成16年4月1日から、事業者が消費者に対して値札や広告などで、あらかじめ価格を表示する場合には、消費税相当額を含んだ支払総額の表示を義務付ける「総額表示方式」が実施されています。
平成26年4月1日及び令和元年10月1日の消費税率の引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から、消費税転嫁対策特別措置法により、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間、一定の要件の下、税込価格を表示することを要しないこととする特例が設けられましたが、同法が令和3年3月31日に失効することに伴い、令和3年4月1日以降、消費者に対して価格を表示する場合には、税込価格を表示することが必要となります。
◆総額表示義務の対象について
1.総額表示義務は、事業者が不特定かつ多数の者に、あらかじめ販売する商品等の価格を表示する場合に税込価格を表示することを義務付けるものです。また、総額表示義務は、取引の相手方に対して行う価格表示であれば、店頭における表示、チラシ広告、新聞・テレビの広告など、どのような表示媒体でも対象となります。
※会員のみを対象として商品やサービスの提供を行っている場合であっても、その会員の募集が広く一般を対象に行われている場合には、総額表示義務の対象です。
※取引に際して相手方に交付する請求書、領収書等における商品の価格の表示は、不特定かつ多数の者にあらかじめ価格を表示しているものではないため、総額表示義務の対象とはなりません。
2.専ら他の事業者に商品の販売を行う場合であり、具体的には、商品又はサービスの内容、性質から、およそ事業の用にしか供されないような商品の販売又はサービスの提供であることが客観的に明らかな場合は、総額表示義務の対象とはなりません。
3.総額表示義務の対象となるのは、あらかじめ価格を表示する場合であり、価格表示をしていない場合にまで税込価格の表示を義務付けるものではありません。
※製造業者等が、自己の供給する商品について、小売業者の価格設定の参考となるものとして設定している、いわゆる希望小売価格を表示する場合(その希望小売価格をそのまま消費者に対する販売価格とする場合を除く)には、総額表示義務の対象とはなりません。
※値引き販売の際、価格表示の「○割引き」や「○円引き」とする表示自体は、総額表示義務の対象とはなりません(値引前の価格や値引後の価格を表示する場合には、総額表示義務の対象)。
◆総額表示の具体的な表示方法
総額表示義務は、その商品の「税込価格」を表示することを義務付けているもので、税込価格が明瞭に表示されていれば、税込価格に併せて「税抜価格」、「消費税額等」、「消費税率」等を併記することも可能です。例えば、税込価格11,000円(消費税率10%)の商品の場合は、次のような表示が総額表示として認められます。
①11,000円、②11,000円(税込)、③11,000円(税抜価格10,000円)、④11,000円(うち消費税額等1,000円)、⑤11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)、⑥11,000円(税抜価格10,000円、消費税率10%)、⑦10,000円(税込価格11,000円)
※③、⑤、⑥、⑦のように税込価格と併せて税抜価格を表示することは認められますが、文字の大きさや色合いなどを変えることにより「税抜価格」をことさら強調し、消費者に税抜価格が税込価格であると誤認を与えるような表示の場合は、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の問題が生ずるおそれがあります。
◆商品本体における価格表示が税抜価格のみの表示になっている場合
総額表示の義務付けは、消費者が商品やサービスを購入する際に、「消費税額を含む価格」を一目で分かるようにするためのものであるため、個々の商品本体における価格表示が税抜価格のみの表示になっている場合であっても、棚札やPOPなどによって、その商品の「税込価格」が一目で分かるようになっていれば、総額表示義務での問題はありません。
なお、インターネットやカタログなどを用いた通信販売に関しては、ウェブ上やカタログ上において税込価格が表示されていれば、送付される商品自体に税抜価格のみが表示されていたとしても、総額表示義務での問題はありません。