令和3年4月から変わる中小企業向け「所得拡大促進税制」の概要
「所得拡大促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が国内雇用者※に対する給与等の支給額を前年度より増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
令和3年度税制改正において、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、適用要件を見直した上で、適用期限が2年延長されました。
これにより、令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する各事業年度(個人事業主は令和4年から冷和5年までの各年)について、改正後の制度が適用されます。
※国内雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうち、その法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。法人の役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者は含まれません。
◆改正後の適用要件等(令和3年4月1日以後の開始事業年度から適用)
◎通常措置の適用要件
・雇用者給与等支給額※が前年度の雇用者給与等支給額(以下、比較雇用者給与等支給額)と比べて1.5%以上増加していること。
【雇用者給与等支給額一比較雇用者給与等支給額/比較雇用者給与等支給額≧1.5%】
※雇用者給与等支給額とは、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者する給与等の支給額をいい、その給与等に充てるために他の者から支払を受ける金額(雇用安定助成金額※を除く)がある場合には、その金額を控除した金額となります。
※雇用安定助成金額とは、国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額です。
◎税額控除額
上記の適用の要件を満たす場合、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(以下、控除対象雇用者給与等支給増加額※)の15%を税額控除します。ただし、調整前法人税額(個人事業主の場合は調整前所得税額)の20%が上限です。
※控除対象雇用者給与等支給増加額の金額が調整雇用者給与等支給増加額※を超える場合には、その調整雇用者給与等支給増加額となります。
※調整雇用者給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額や比較雇用者給与等支給額の計算の基礎となる給与等に充てるための雇用安定助成金額がある場合に、雇用者給与等支給額(雇用安定助成金額を控除した金額)から比較雇用者給与等支給額(雇用安定助成金額を控除した金額)を控除した金額をいいます。
◎上乗せ措置
次のいずれも満たす場合は税額控除率が10%上乗せされ、25%となります。・雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額と比べて2.5%以上増加していること。
【雇用者給与等支給額一比較雇用者給与等支給額/比較雇用者給与等支給額≧2.5%】
・次の1、2のいずれかを満たすこと。
1適用年度における教育訓練費の額が前事業年度における教育訓練費の額と比べて10%以上増加していること。
2適用年度終了日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことにつき一定の証明がされていること。
◆改正前の制度の概要
平成30年4月1日から令和3年3月31日までに開始される事業年度(個人事業主は令和元年から冷和3年まで)は、以下の適用要件を満たす場合に、雇用者給与等支給額から比較雇用者
給与等支給額を控除した金額の15%(上乗せ要件を満たす場合は25%)を税額控除します。
◎通常措置の適用要件
・雇用者給与等支給額が対前年度を上回っており、継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額と比べて1.5%以上増加していること。
◎上乗せ措置の適用要件
・継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たすこと。
※継続雇用者とは、前年度から適用年度までの全ての月分で給与等の支給を受けている国内雇用者で、雇用保険の一般被保険者です。