令和4年4月から施行される年金制度改正の概要
◆受給開始時期の選択肢拡大
◎繰下げ支給の上限年齢引上げ
【現行】公的年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、66歳から70歳までの間に繰り下げて請求することができ、請求時点に応じて、年金額は1月あたり0.7%が増額(最大42%)されます。
【改正】令和4年4月1日から、繰下げ受給の上限年齢が75歳に引上げられ、それに伴い、増額率に用いる繰下げ月数の上限も120月に引上げとなり、最大84%の増額となります。
・繰下げ加算額=老齢年金額×増額率<0.7%×繰下げ月数>
※施行日(令和4年4月1日)の前日時点で70歳に到達している方、又は受給権を取得した日から5年を経過している方は対象外。
◎繰上げ支給の減額率引下げ
【現行】公的年金の受給開始年齢を60歳から64歳までの間に繰り上げて請求する場合、請求時点に応じて、年金額は1月あたり0.5%が減額されます。
【改正】令和4年4月1日から、繰上げ支給の減額率が1月あたり0.4%に引下げられます。
・繰上げ減算額=老齢年金額×減額率(0.4%×繰上げ月数)
※施行日(令和4年4月1日)の前日時点で60歳に到達している方は対象外。
◆60歳~64歳の在職老齢年金制度の見直し
【現行】60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度(低在老)について、年金月額と総報酬月額相当額(標準報酬月額+標準賞与額:12)の合計額が28万円を超えた場合に、年金額の一部又は全額が支給停止されます。
【改正】令和4年4月1日から、年金が支給停止となる基本月額と総報酬月額相当額の合計額の基準を47万円に引上げて、47万円を超える場合に年金額の一部又は全額が支給停止されます。
・支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2×12
◆在職定時改定の導入
【現行】65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者については、厚生年金被保険者の資格喪失時(退職時・70歳到達時)に年金額が改定されます。
【改正】令和4年4月1日から、65歳以上の老齢厚生年金受給者が在職中であっても、厚生年金保険の被保険者期間に基づき、毎年定時(年1回、10月)に年金額が改定されます。具体的には、基準日(9月1日)の属する月前の被保険者であった期間を基礎として、基準日の属する月の翌月から改定されます。
※厚生年金保険の被保険者期間の月数が240月以上となった場合は、その時点で生計維持関係に応じた加給年金の加算・停止および振替加算の加算・不該当の処理が行われます。
※在職定時改定後の離婚分割請求については、分割改定後の標準報酬に基づく基準月(9月)前の被保険者期間を基礎として年金額が改定されます。基準月(9月)以降の被保険者期間は、次回の在職定時改定または退職改定時に年金額の改定を行います。
◆加給年金の支給停止に関するルール改善
【現行】老齢厚生年金や障害厚生年金(1級・2級)に加算されている配偶者の加給年金については、加算の対象となる配偶者が老齢(退職)年金(加入期間20年以上又は中高齢の特例に該当する場合)又は障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)を受給している間は支給停止されますが、
配偶者の老齢(退職)年金等が全額支給停止されている場合、加給年金の支給停止は解除されます。
【改正】令和4年4月1日から、加算の対象となる配偶者の老齢(退職)年金が全額支給停止されている場合でも、加給年金は支給停止されます。
※経過措置として、施行日(令和4年4月1日)の前日時点で、配偶者の老齢厚生年金が全額支給停止されている場合は、次に該当するまでの間、加給年金は施行日以降も引き続き支給されます。
・受給者自身の老齢厚生年金や障害年金が全額支給停止となったとき。
・配偶者の老齢厚生年金が、基本手当の受給による全額支給停止を解除されたとき。
・配偶者の老齢(退職)年金が、他の年金を受給することにより支給停止されたとき。
◆年金手帳から基礎年金番号通知書へ切り替え
【現行】国民年金第1~3号被保険者となった方(20歳に到達された方及び20歳前に厚生年金保険の被保険者となった方等)には年金手帳が交付され、基礎年金番号が通知されます。
【改正】令和4年4月1日から、年金手帳から基礎年金番号通知書に切り替わり、年金手帳の再交付は廃止となります。なお、年金手帳は基礎年金番号を明確にする書類として利用できます。