令和5年度与党税制改正大綱の概要(主な個人関連)
◆NISA制度の抜本的拡充・恒久化
令和6年から、現行の一般NISA及びつみたてNISAを一本化し、非課税保有期間を無期限化、年間投資上限額を拡充した新制度とするとともに、制度を恒久的な措置とします。
新制度の年間投資上限額は、一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の「つみたて投資枠」が120万円、上場株式等への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」が240万円です。併用が可能なため、合計360万円が年間投資上限額となります。
また、年間投資上限額とは別に、生涯利用できる非課税限度額(取得価額の合計で判定)を1,800万円(うち「成長投資枠」は1,200万円まで)とします。
現行の一般NISA及びつみたてNISAについては、令和5年末で買付が終了しますが、非課税口座内にある投資商品は、新制度における非課税限度額の外枠で、現行の取扱いが継続されます。
※令和2年度税制改正において、令和6年から一般NISAを2階建ての新制度に変更する改正が行われましたが、今回の改正により実施されません。
◆相続時精算課税制度の見直し
①相続時精算課税に暦年課税と同水準の基礎控除(110万円)を創設し、特定贈与者からの贈与が年間110万円以下の場合は申告が不要となります。また、特定贈与者が死亡した場合に相続税の課税価格に加算される贈与財産の価額は、110万円を控除した後の残額となります。
②特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物が災害により一定の被害を受けた場合、特定贈与者に係る相続税の課税価格に加算する当該土地又は建物価額は、被害額を控除した価額とします。
※上記は令和6年以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用します。
◆生前贈与加算の加算期間の見直し
現行、相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得している場合は、相続税の課税価格に加算されますが、加算期間を相続開始前「7年以内」に延長します。また、延長した期間(3年超7年以内)において取得した贈与財産は、当該財産の価額の合計額から100万円を控除して相続税の課税価格に加算します。
令和6年以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用します。
◆防衛力強化に係る財源確保のための措置(所得税・たばこ税の措置)
わが国の防衛力の抜本的な強化を行う財源を確保するため、法人税、所得税及びたばこ税について税制措置を講じて、令和6年以降の適切な時期(未定)に施行します。
所得税については、所得税額に対し当分の間、税率1%の新たな付加税を課します。家計に配慮し、復興特別所得税率を1%引下げますが、復興財源を確実に確保するため課税期間を延長します。
たばこ税については、1本あたり3円の引上げを段階的に実施します。
◆極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
令和7年分以後、その年分の基準所得金額(申告不要制度を適用しないで計算した各種所得の合計所得金額)から3億3千万円を控除し、22.5%を乗じた金額が基準所得税額(基準所得金額に係る所得税額)を超える場合は、その超える金額に相当する所得税を課す措置を講じます。
◆教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の延長等
教育資金に係る非課税措置は以下の見直しを行い、適用期限を3年延長します。また、結婚・子育て資金に係る非課税措置は2と同様の見直しを行い、適用期限を2年延長します。
1教育資金管理契約の終了までに贈与者が死亡した場合において、当該贈与者に係る相続税の課税価格が5億円を超えるときは、一定の受贈者(23歳未満である場合や学校等に在学している場合など)であっても、教育資金として使われなかった残額は相続等により取得したものとみなします。2受贈者が30歳に達するなどで契約が終了した場合において、教育資金として使われなかった残額は贈与税の課税対象となりますが、受贈者の年齢に関係なく一般税率が適用されます。
※上記は令和5年4月以後に取得する信託受益権等に係る相続税又は贈与税について適用します。
◆相続した空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の延長等
以下の措置を講じた上で、適用期限を4年延長(令和9年まで)します。
1相続又は遺贈により取得した被相続人の居住用家屋等について、譲渡後の一定期間内に耐震改修が行われる場合や除却等が行われる場合も適用対象とします。
2相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及びその敷地等の取得をした相続人が3人以上である場合における特別控除額を2,000万円とします。
※令和6年以後に行う被相続人居住用家屋等の譲渡について適用します。