令和5年6月から施行される「改正消費者契約法」の概要
◆概要
消費者契約法は、個人である消費者※と事業者との間で締結される消費者契約について、消費者を不当な勧誘や契約から守るために民事ルールとして、制定された法律です。
※事業として、又は事業のために契約の当事者となる場合を除く。
・同法では、消費者契約について不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定しており、すべての消費者契約が適用の対象となります。
・令和4年5月に成立した改正により、不当な勧誘による契約の取消や無効となる不当な契約条項の範囲の拡大、事業者の努力義務の拡充が行われ、令和5年6月1日に施行されます。
◆不当な勧誘による契約の取消権
事業者が消費者を誤認させたり、困惑させたりする不当な勧誘をして契約を締結した場合、消費者はその契約を後から取り消すことができます。
この取消権は、追認をすることができるときから1年間(霊感商法等の場合は3年間)、契約したときから5年間(霊感商法等の場合は10年間)、行使することができます。
◆不当な勧誘については、①重要事項について事実と異なる説明をした場合(不実告知)②将来における変動が不確実な事項について、確実であると告げた場合(断定的判断の提供)、③重要事項について不利益となる事実を故意又は重大な過失により告げなかった場合(不利益事実の不告知)、④消費者の自宅などに事業者が強引に居座った場合(不退去)、⑤販売店などで強引に引き留めた場合(退去妨害)⑥就職セミナー商法等(不安をあおる告知)、⑦デート商法等(好意の感情の不当な利用)⑧判断力が著しく低下した高齢者等の不安をあおった場合(判断力の低下の不当な利用)、⑨霊感商法等(霊感等による知見を用いた告知)、⑩契約前なのに強引に代金を請求する等(契約締結前に債務の内容を実施等)、⑪通常の分量を著しく超えることを知りながら勧誘した場合(過量契約)が該当する行為となります。
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【改正により追加される不当な勧誘行為】
勧誘することを告げずに、消費者を任意に退去することが困難な場所に同行し、その場所において勧誘をした場合
・威迫する言動を交えて、消費者が契約について第三者に相談の連絡を行うことを妨げた場合
・契約の目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にした場合(上記10の行為に追加)
・不当な契約条項の無効
契約の中に、消費者の利益を一方的に害する以下のような条項が入っている場合、その条項の全部又は一部が無効となります。
① 事業者の損害賠償責任を免除する条項(損害賠償責任の全部を免除する条項や事業者の故意または重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項、事業者が責任の有無や限度を自ら決定する条項)
② 消費者はいかなる理由でもキャンセルできないとする条項(消費者の解除権を放棄させる条項や事業者が消費者の解除権の有無を自ら決定する条項)
③ 成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項(消費者が後見開始等の審判を受けたことのみを理由として事業者に解除権を付与する条項)
④ 平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項(キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分や、遅延損害金につき年利14.6パーセントを超える部分についての条項)5消費者の利益を一方的に害する条項(任意規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限しまたは義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの)
【改正により追加される無効となる契約条項】
事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項で、「法律上許される限り」等の免責の範囲が不明確なもの(軽過失がある場合のみ適用されることを明らかにしていないもの)は無効となります。
例えば、「当社は、法律上許される限り1万円を限度として損害賠償責任を負います。」は無効となりますが、「当社は、軽過失の場合には1万円を限度として損害賠償責任を負います。」は有効な条項となります。
◆改正による事業者の努力義務の拡充
事業者は消費者から求められたら解除権の行使に必要な情報を提供することや、解約料を請求する際に解約料の算定根拠の概要を説明することなどが努力義務となります。