令和6年11月施行の「フリーランス事業者間取引適正化等法」 の義務等
◆概要
近年、働き方の多様化に伴って、フリーランスとして働く人が増加していますが、個人として業務を受けるフリーランスは組織である発注事業者に比べ、交渉力や取引上の立場が弱いことが多いことから、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が制定され、令和6年11月1日から施行されます。
◆本法律の適用される取引
本法律は「フリーランス(特定受託事業者)」と「発注事業者(特定業務委託事業者)」との間の業務委託に係る取引に適用されます。事業者間(BtoB)における委託取引が対象となり、一般消費者がフリーランスに仕事を依頼する場合や、フリーランスが販売するものを消費者や企業が購入する場合などは対象外です。
対象となるフリーランス(特定受託事業者)とは「業務委託の相手方である事業者であって、従業員を使用しないもの」をいい、一人社長といったような形態で事業を行う法人も該当します。
また、発注事業者(特定業務委託事業者)とは「特定受託事業者に業務委託をする事業者であって、従業員を使用するもの」をいいます。
※「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用する場合が該当し、短期間・短時間などの一時的に雇用される者は含まれません。なお、事業に同居親族のみを使用している場合は該当しません。
◆発注事業者に対する義務と禁止行為
本法律では、以下のとおり発注事業者が守るべき義務や禁止行為が定めれており、取引の適正化(①②③)と就業環境の整備(④⑤⑥⑦)で構成されています。
なお、①は従業員の有無にかかわらず業務委託する全ての事業者への義務となります。また、③は1ヵ月以上の業務委託をする場合、⑤⑦は6ヵ月以上の業務委託をする場合が対象となります。
義務項目 | 具体的な内容 |
---|---|
①書面等による取引条件の明示 | 業務委託した場合は、直ちに「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」などの取引条件を書面又はメール、SNSのメッセージなどによっ
て明示しなければなりません。 ※必ずしも契約書による契約締結を義務としたものではありません。 |
②報酬支払期日の設定期日内の支払 | 発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で報酬支払期日を設定し、その期日内に報酬を支払わなければなりません。 |
③禁止行為 | 1ヵ月以上の業務委託をした場合、次の7つの行為が禁止となります。①受領拒否、②報酬の減額、③返品、④買いたたき、⑤購入・利用強制、⑥不当な経済上の利益の提供要請、⑦不当な給付内容の変更・やり直し |
④募集情報の的確表示 | 広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、偽の表示や誤解を与える表示をしてはならず、また、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。 |
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮 | 6ヵ月以上の業務委託をした場合、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。 (例)「子の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更すること等 |
⑥ハラスメント対策に係る体制整備 | フリーランスに対するハラスメント行為に関し、①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発、②相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応などを講じなくてはなりません。 |
⑦中途解除等の事前予告理由開示 | 6ヵ月以上の業務委託を中途解除したり、更新しない場合は、原則として30日前までに予告しなければなりません。 また、予告の日から解除日までに中途解除や不更新の理由の開示の請求があった場合には理由の開示を行わなければなりません。 |