令和6年度税制改正大綱の概要(主な企業関連)
◆中小企業向け賃上げ促進税制の見直し
中小企業向け賃上げ促進税制について、次の見直しを行い、適用期限を3年延長する。
税額控除の額について、当期の税額から控除できなかった分を5年間にわたって繰り越すことを可能とする。ただし、繰越税額控除をする事業年度において雇用者給与等支給額が前年度の雇用者
給与等支給額を超える場合に限り、適用できることとする。
・ 教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の増加割合が5%以上であり、かつ、教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に控除率に10%を加算する。
・当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けた事業年度、又はくるみん認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を受けた事業年度である場合に税額控除率に5%を加算する措置を加える。
※「くるみん」は子育てと仕事の両立支援に取り組む企業を認定する制度、「えるぼし」は女性の活躍推進に取り組む企業を認定する制度。
事業承継税制における承継計画の提出期限延長
・法人版事業承継税制(非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)の特例措置は10年間(平成30年1月~令和9年12月末)の時限措置であり、適用するには令和6年3月末までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出し確認を受けることが必要とされているが、コロナの影響が長期化したことを踏まえ、特例承継計画の提出期限を令和8年3月末まで2年延長する。
※特例措置の適用期限(令和9年12月末まで)については延長しない。
・あわせて個人版事業承継税制(個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)における個人事業承継計画の提出期限についても2年延長する。
◆交際費等の損金不算入制度の見直し
損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費
※に係る金額基準を1人当たり1万円以下(現行:5,000円以下)に引上げる。
・上記の改正は、令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用する。
※専らその法人の役員や従業員等に対する接待等のために支出するものは除く。
●インボイス制度の自動販売機特例等に係る帳簿の記載事項の見直し
・一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる自動販売機及び自動サービス機による課税仕入れ並びに使用の際に証票が回収される課税仕入れ(3万円未満のものに限る)については、帳簿への住所等の記載を不要とする。
上記の趣旨を踏まえ、令和5年10月1日以後に行われる上記の課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。
◆その他の企業関連
・大企業向け賃上げ促進税制について、基本の控除率を10%に引下げるとともに、継続雇用者給与等支給額の増加割合に応じて控除率に最大15%を加算するなどの見直しを行うほか、常時使用従業員数が2,000人以下を「中堅企業」と位置付けて、上乗せ措置を緩和した制度を新設する。
・企業が国内で自ら研究開発を行った特許権又はAI分野のソフトウェアに係る著作権について、国内への譲渡所得又は国内外からのライセンス所得に対し所得の30%を損金算入できる「イノベーションボックス税制」を創設する。
・外形標準課税の対象法人について、現行基準(資本金1億円超)は維持しつつ、前事業年度に対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には対象とする。また、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人等のうち、資本金が1億円以下であって、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものを外形標準課税の対象とする。
・国として特段に戦略的な長期投資が不可欠となる投資を選定し、対象物資(半導体、電動車、鉄鋼(グリーンスチール)、基礎化学品(グリーンケミカル)、航空機燃料(SAF))の生産・販売量に比例して法人税額を控除する「戦略分野国内生産促進税制」を創設する。
・ 外国人旅行者向け消費税免税制度により免税購入された物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。
・高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、その課税期間において取得した金地金等の合計額が200万円以上である場合を加える。