軽減税率制度の導入に伴い必要となる事業者の対応は
平成31年(2019年)10月1日から、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行 される新聞(定期購読契約に基づくもの)」を対象に消費税の「軽減税率制度」が実施されます。 これにより事業者は、日々の業務において、税率の異なるごとに売上げの仕入れ(経費)を区分経理した上で、申告・納税を行うことが必要となります。
◆帳簿及び請求書等の記載と保存
平成31年(2019年)10月1日から平成 35 年(2023年)9月30 日までの間は、仕入税額控除の要件について、軽減税率の適用対象となる商品の仕入れかそれ以外の仕入れかの区分を明確にするための記載事項を追加した帳簿及び請求書等の保存が要件とされます(区分記載請求書等保存方式)。
具体的には、現行の請求書等保存方式において必要とされている記載事項に、帳簿は「軽減税率の対象品目である旨」、請求書等は「軽減税率の対象品目である旨」と「税率ごとに合計した税込対価」が追加されます。
※仕入先から交付された請求書等に、「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに合計した税込対価」の額の記載がない時は、交付を受けた事業者自らが追記できます。
●軽減税率制度実施後の税額計算と特例
「軽減税率制度の下では、基本的には、税率の異なるごとに売上げ及び仕入れを記帳し、これを基及び仕入総額を算出して売上税額及び仕入税額を計算することになります。 売上げ又は仕入れを軽減税率と標準税率とに区分することが困難な中小事業者に対しては、平成 31年10月1日から一定期間、売上税額又は仕入税額の計算の特例が設けられています。
【売上税額の計算の特例】
➀小売等軽減仕入割合の特例(仕入れを税率ごとに管理できる卸売・小売業を営む中小事業者)
卸売業・小売業に係る課税売上げ(税込み、以下同じ)に、当該事業に係る課税仕入れに占める 軽減税率対象品目の売上げにのみ要する課税仕入れの割合 (小売等軽減仕入割合)を乗じて、軽減 対象資産に係る課税売上げを算出し、売上税額を計算できます。
②軽減売上割合の特例(➀の特例を適用する事業者以外の中小事業者)
課税売上げに、通常の連続する 10営業日の課税売上げに占める同期間の軽減税率対象品目の課税売上げの割合(軽減売上割合)を乗じて、軽減対象資産に係る課税売上げを算出し、売上税額を計算できます。
③上記➀・②の割合の計算が困難な場合(主に軽減税率対象品目を販売する中小事業者)
これらの割合を 50/100 とすることができます。
※上記を適用できる期間は、平成31年(2019年)10月1日から平成 35 年(2023年)9月30日までの期間(➀の特例については、簡易課税制度の適用を受けない期間に限る)。
【仕入税額の計算の特例】
➀小売等軽減売上割合の特例(売上げを税率ごとに管理できる卸売・小売業を営む中小事業者)
卸売業・小売業に係る課税仕入れに、当該事業に係る課税売上げに占める軽減税率対象品目の課税売上げの割合 (小売等軽減売上割合)を乗じて、軽減対象資産に係る課税仕入れを算出し、仕入税額を計算できます。
②簡易課税制度の届出の特例(➀の特例を適用する事業者以外の中小事業者)
簡易課税制度を適用しようとする課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を提出し、同制度を適用することが可能です。
※上記を適用できる期間は、➀の特例が平成 31 年(2019年)10月1日から平成 32 年 (2020 年)9月30日の属する課税期間の末日までの期間(簡易課税制度の適用を受けない期 間に限る)、②の特例が平成31年(2019年)10月1日から平成32年(2020年)9月30 日までの日の属する課税期間。
●適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)の導入
平成35年(2023年)10月1日から複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、「適格請求書等保存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が導入されます。適格請求書を交付しよう とする課税事業者は、適格請求書発行事業者として登録を受ける必要があります。
なお、適格請求書発行事業者の登録申請書は、適格請求書等保存方式導入前の平成33年(2021年)10月1日から提出することが可能です。