上場株式、FX、暗号資産に係る確定申告の注意点等
◆上場株式等の取り扱い(源泉徴収口座の場合)
特定口座(源泉徴収口座)を利用している場合、金融商品取引業者等により源泉徴収され、納税が完結しますので、確定申告をする必要はありません。この場合、配偶者控除や扶養控除などを判定する際の「合計所得金額」は、源泉徴収口座の所得を含めずに判定します。
ただし、源泉徴収口座の譲渡所得等が赤字となった場合(上場株式等の配当等を受け入れている場合においてその上場株式等の配当等との通算後)で、当該源泉徴収口座以外の上場株式等に係る譲渡所得等の黒字と相殺する場合や、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例の適用を受ける場合などには、確定申告が必要です。
◎上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
上場株式等を金融商品取引業者等を通じて売却したこと等により生じた損失がある場合は、確定申告により、その年分の上場株式等の配当等に係る利子所得及び配当所得(上場株式等に係る配当所得については、申告分離課税を選択したものに限る)と損益通算ができます。
また、損益通算しても控除しきれない損失については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により上場株式等に係る譲渡所得等及び上場株式等に係る配当所得等から繰越控除することができます。※上場株式等の譲渡がなかった年も、譲渡損失を翌年へ繰り越すための申告が必要です。
◎確定申告による「合計所得金額」への影響
確定申告をした場合、譲渡所得等(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用前の金額)が「合計所得金額」に含まれるため、配偶者控除や扶養控除、住宅ローン控除等の適用を受けることができなくなる場合があります。
◆FX(外国為替証拠金取引)の取り扱い
FXの利益は、「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」の適用対象となり、申告分離課税の対象となります。税率は、他の所得額にかかわらず一律20.315%です。
なお、FXには、店頭取引と取引所取引(金融商品取引所の開設する金融商品市場で行われる取引)がありますが、いずれの場合も課税関係は同じです。
◎差金決済による差損が生じた場合
損失が生じたときは、他の先物取引に係る雑所得等の金額との損益の通算は可能ですが、先物取引に係る雑所得等以外の所得の金額との損益通算はできません。
他の「先物取引に係る雑所得等」と損益通算をしてもなお引ききれない損失の金額は、一定の要件の下、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除できます。
※繰越控除の適用を受けるためには、損失が出た年から連続して確定申告をする必要があります。◎給与所得者の確定申告
年末調整が済んでいる給与所得者でも「先物取引に係る雑所得等」などの給与・退職所得以外の所得が合計20万円を超える場合は確定申告が必要になります。
◆暗号資産(仮想通貨)の取り扱い
ビットコインをはじめとする暗号資産の売却等により生じる損益については、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超えており、暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合は原則として「事業所得」、帳簿書類の保存がない場合は原則として「雑所得(業務に係る雑所得)」に区分されます。なお、暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合(例えば、事業所得者が事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用)は、事業所得に区分されます。
◎所得の計算方法
保有する暗号資産を売却(日本円に換金)した場合の所得金額は、その暗号資産の譲渡価額と譲渡原価等との差額となります。また、保有する暗号資産で商品を購入した場合、暗号資産を譲渡したことになるため、その暗号資産の譲渡価額と譲渡原価等との差額が所得金額となります。
なお、暗号資産の売却等による所得は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されますので、その所得金額は、総収入金額から必要経費(暗号資産の譲渡原価その他暗号資産の売却等に際し直接要した費用)を控除することにより算出します。
◎損失の取扱い
雑所得の金額の計算上生じた損失については、給与所得など他の所得と通算するはことはできません。ただし、事業所得に区分される場合は他の所得と通算できます。