最低賃金制度と労働契約法・高年齢者雇用安定法改正案の概要
◆最低賃金制度の概要
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき定められた最低賃金以上の賃金を使用者は支払わなければならない制度で、地域別最低賃金(都道府県ごとに定められ、雇用形態などにかかわりなく全ての労働者に適用)と、特定最低賃金(特定産業の基幹的労働者に適用)の2種類があります。
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です(割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当を除く)。
なお、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません(罰則もあり)。仮に最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、法律によって無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
◎平成24年度の地域別最低賃金額の引上げ目安(単位・円)
*生活保護水準を下回る11都道府県:北海道10~15、青森4~5、宮城7~10、埼玉6~12、千葉5~6、東京10~20、神奈川9~18、京都4~8、大阪8~16、兵庫6~10、広島6~12
*上記以外の36県:愛知6、その他の県は4
◆労働契約法改正案の概要
1.有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合(※1)は、労働者の申し込みにより、無期労働契約(※2)に転換させる仕組みを導入する。
※1 原則6ヶ月以上の空白期間(クーリング期間)があるときは、前の契約期間を通算しない。
※2 別段の定めがない限り、従前と同一の労働条件。
2.有期労働契約の更新等(「雇止め法理」の法定化
雇止め法理(判例法理)を制定法化する。(※)
※有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態で存在している場合、または有期労働契約の期間満了後の雇用継続につき、合理的期待が認められる場合には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、有期労働契約が更新(締結)されたものとみなす。
3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとする。
施行期日:2については公布日。1、3については公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日。
◆高年齢者雇用安定法改正案の概要
1.継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
継続雇用制度の対象となる高年齢者につき事業主が労使協定により定める基準により限定できる仕組みを廃止する。
2.継続雇用制度の対象者が雇用される企業の範囲の拡大
継続雇用制度の対象となる高年齢者が雇用される企業の範囲をグループ企業まで拡大する仕組みを設ける。
3.義務違反の企業に対する公表規定の導入
高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設ける。
4.「高年齢者等職業安定対策基本方針」の見直し等
雇用機会の増大の目標の対象となる高年齢者を65歳以上の者にまで拡大するとともに、所要の整備を行う。
5.所要の経過措置を設定
施行後、直ちに希望者全員の65歳までの継続雇用を義務づけるのではなく、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢引上げに合わせた経過措置を設ける。
施行期日:平成25年4月1日