中小企業の新事業への取組みに関する調査の概要(日本政策金融公庫)
【新事業への取り組み状況】
最近6年の間に新事業(これまで自社ではまったく扱っていなかった分野の製品やサービスを開発・提供することで、経営の多角化や事業転換を図ること)に取り組んでいる企業の割合は22.8%となった。
【新事業の経営形態】
新事業の経営形態をみると、「自社内で事業化」(出資を伴わない他者との一部業務提携を含む)が85.1%と最も多く、次いで「単独で新会社を設立」(9.7%)となっており、「他企業と共同出資で新会社を設立」「他企業との合併」「他企業への出資」などはわずかである。
【既存事業の状況】
新事業に取り組む直前の既存事業の状況では、「不振ではないが、将来に不安があった」が56.9%、「不振だった」が12.4%と、合わせて69.3%に達している。他方、「順調だった」という回答も30.6%を占めている。
【新事業に取り組んだ動機】
新事業に取り組んだ動機は、「適当な進出分野が見つかったため」との回答割合が50.1%と最も高く、次いで「これまでにない画期的なビジネスチャンスが見つかったため」(33.0%)、「顧客や取引先の要請」(32.2%)などの順となっている。
業種別にみると、製造業では「顧客や取引先の要請」(38.7%)の割合がより高くなっており、非製造業では「地域社会に貢献するため」(30.2%)の割合が高くなっている。
【新事業への評価】
現時点での新事業に対する自己評価について、「成功」と回答した企業の割合は13.1%となった。「どちらかといえば成功」(37.6%)と合わせると50.7%の企業が新事業について前向きな評価をしている。
【業績の変化】
最近の自社の業績(売上、従業員数、売上高対経常利益率)を5年前と比較すると、新事業に取り組んでいる企業では、売上が「増加した」と回答した企業は44.9%、「減少した」は40.0%となっており、「増加した」割合は新事業に取り組んでいない企業の32.2%、新事業から撤退した企業の29.0%を大きく上回っている。
従業員数をみると、新事業に取り組んでいる企業では「増加した」が43.0%となり、「減少した」(28.6%)を大きく上回っている。
【新事業の問題点】
新事業に取り組む上での問題点をみると、「質的な人材の確保が難しい」と回答した企業の割合が37.6%と最も高く、次いで「製品・サービスの開発に必要な専門知識・ノウハウの不足」(37.1%)、「販売先や受注先の確保が難しい」(36.5%)などで、「特に問題点はない」は15.0%となっている。
【今後の取組み予定】
今後の新事業への取組み予定をみると、「1年以内に取り組む予定」と回答した企業の割合は8.2%となった。「2~3年以内に取り組む予定」(7.7%)、「時期は決まっていないが準備中」(15.7%)と合わせると、31.6%の企業が新事業に取り組む予定があるとしている。
【新事業進出への支援策】
新事業に進出する場合に必要と感じる支援策をみると、「新事業進出に必要な融資」との回答が46.9%と最も多く、次いで「製品・サービスの開発に必要な専門知識・ノウハウの提供」(38.6%)、「販売先や受注先の紹介」(35.0%)などの順となっている。
【新事業に取り組んでいない理由】
新事業に取り組んでいない企業の理由では、「既存事業を強化する方針だから」との回答割合が67.6%と最も高く、次いで「製品・サービスの開発に必要な専門知識・ノウハウが不足しているから」(22.8%)、「販路や顧客の開拓が難しいから」(21.1%)などで、「現在の業績に満足しているから」は10.2%となっている。