上場株式等の譲渡・配当等に係わる主な制度の概要
◆上場株式に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
上場株式等を売却したこと等により生じた損失は、平成21年分以降、確定申告により、その年分の上場株式等に係る配当所得の金額(申告分離課税を選択したものに限る)と損益通算ができます。また、損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以降3年間にわたり、確定申告により株式等に係る譲渡所得に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除することができます。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除は、まず株式等に係る譲渡所得等の金額から控除し、なお控除しきれない損失の金額があるときは、上場株式等に係る配当所得の金額から控除します。
◆上場株式等の配当所得に係る申告分離課税制度
平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等(一定の大口株式等が受けるものを除く)については、総合課税のほかに、申告分離課税を選択することができます。
なお、申告する場合には、申告する上場株式等の配当等の全額について、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択する必要があります。
※申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、配当控除の適用はありません。
◆源泉徴収口座内で受け入れた配当等と譲渡損失との損益通算
平成22年1月1日以後に源泉徴収口座に保管等されている上場株式等の配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く)を受ける場合は、その配当等を源泉徴収口座に受け入れることを選択することができます。この選択をする場合には、源泉徴収口座が開設されている証券会社等に対して「源泉徴収選択口座内配当受入開始届出書」を提出する必要があります。
源泉徴収口座内における上場株式等の譲渡損失の金額があるときは、その配当等の金額からその譲渡損失を控除した金額に対して源泉徴収税率を適用して所得税の計算をすることになります。
なお、その源泉徴収口座内で生じた上場株式等の譲渡損失の金額について、確定申告を行うことにより、他の上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び申告分離課税制度を選択した他の上場株式等に係る配当等の金額から控除するときは、その源泉徴収口座に係る上場株式等の配当等の金額は確定申告不要制度を適用できないことから確定申告する必要があります。
◆破産等により株式の価値が失われたときの特例
株式の発行会社の破産等による個人の損失は、原則として他の株式等の譲渡益や給与所得など他の所得の金額から控除することはできませんが、特定口座に保管されていた内国法人の上場株式が、上場廃止となった日以後、特定管理株式又は特定保有株式に該当していた場合で、その株式の譲渡があったものとして、その株式の取得価額を譲渡損失の金額とみなす特例があります。この特例により譲渡損失とみなされた金額は、その年の他の株式等の譲渡益から控除できます。
◆確定申告による主な影響
◎合計所得金額……株式等の譲渡所得等(譲渡損失の繰越控除の適用前の金額)は、確定申告をした場合、「合計所得金額」に含まれるため、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、寡婦(夫)控除等の適用を受けることができなくなる場合があります。なお、「源泉徴収ありの特定口座」で申告しなければ、合計所得金額に含めなくてよいことになります。
◎国民健康保険料……国民健康保険の被保険者の場合には、保険料の所得割部分に影響が出る場合があります。料率等は自治体(市区町村)によって異なりますが、国民健康保険加入者の所得等に料率を乗じて所得割を算出しますので、確定申告をすることによって、これらが増えると所得割部分が増える場合があります。なお、この「所得」には、一般に「総所得金額等-33万円」が使われていますので、譲渡損失の繰越控除を利用しても所得が増えなければ(利益が残らなければ)保険料には影響を与えません。