「経営者保証に関するガイドライン」を活用した金融機関の取組事例
【牽制昨日の発揮に課題が残っているが、経営者保証を求めなかった事例】
・当社は、HIDランプ(高輝度放電ランプ)を主力とする自動車用照明器具製造・販売業者であり、近年はLEDランプも好調なため、売上、キャッシュフローともに安定的に推移している。
・同族会社であることから適切な牽制機能の発揮には未だ課題が残っているものの、以下のような点を勘案し、融資に当たり経営者保証を求めないこととした。
①当社は、以前から「中小企業の会計に関する基本要領」に拠った計算書類を作成しており、法人と経営者の間に資金の貸借はなく、役員報酬も適正な金額となっているなど、法人と経営者の資産・経理が明確に区分・分離されていること
②当社の収益力で借入金の返済が十分可能であり、借換資金の調達余力にも問題がないこと
③情報開示の必要性にも十分な理解を示し、適時適切に試算表や資金繰り表により財務情報等を提供しており、長年の取引の中で良好なリレーションシップが構築されていること
【債務超過ではあるが、経営者保証を求めなかった事例】
・当社は、ガス設備工事、メンテナンス、ガス機器販売等を営む当行メインの取引先。
・以下のような点を勘案し、経営者保証を求めないで融資することとなった。
①当社の事業用資産は関連会社(事業用資産の管理会社)の所有であり、社外取締役及び監査役といった外部からの適切な牽制機能の発揮による社内管理体制が整備されているなど、法人と経営者との関係の区分・分離がなされていること
②現在、当社単体では債務超過(関連会社との連結では資産超過)であるが、業績が堅調であることから、今後も利益計上が見込まれ、利益による債務の返済が十分可能であり、2年後の債務超過の解消も見込まれること
③当社からは定期的に試算表及び銀行取引状況表の提出があり、当行からの資料提出の求めにも速やかに対応するなど、適時適切な財務情報の開示が行われていること
④従来から良好なリレーションシップが構築されており、取引状況も良好であること
【保証契約の期限到来に伴い、経営者保証を解除した事例】
・当社は、パン・菓子製造業者であり、国内大手のパン製造業者との業務提携により、同行の一部商品の県内での製造・販売を受託するなど、業況は安定的に推移している。
・既存の根保証契約の期限到来に伴い、現社長の根保証契約の解除について相談があった。
・検討を行ったところ、以下のような点を勘案し、既存の根保証契約の解除を行うこととした。
①本社、工場、営業者等の事業活動に必要な資産は全て法人所有となっており、役員への貸付金や不透明な経費計上等もなく資金のやりとりは適切な範囲内に収まっており、また、役員報酬は、妥当な水準と判断されるなど、法人と経営者との関係の明確な区分・分離がなされていること
②好業績が続いており、充分な利益が確保されていること
③決算関連資料が継続的に提供されているほか、渉外担当行員が週1回訪問し、業況変化の報告や資金需要等の相談を受けるなど、情報開示についても協力的であること
④創業以来のメイン行として、業況変化や資金需要等ある際には事前に相談を受けるなど、従前から良好なリレーションシップが構築されていること
【会長の保証契約の解除と社長の保証金額の減額を同時に行った事例】
・当社は、主業である材木・健材の卸売業と副業である住宅リフォーム等の建築工事請負業者を兼業しており、業況は堅調に推移している。
・法人設立当初から、運転資金を中心に貸出取引(36百万)があるが、代表権を持つ会長及び社長から連帯して根保証(極度額36百万円)の提供を受けるとともに、事務所に根抵当(第1順位。極度額25百万円)を設定しており、今般、当社から長期運転資金15百万円の追加借入の申込みがあったため、経営者保証の見直しを提案した。
・見直しに先立ち、会長が代表取締役を退任して実質的に経営から退いたことから、新規融資は会長の保証を求めず、単独で代表となった現社長とのみ根保証契約を締結することとした。
・また、期存分と新規分を合計した債権額(計51百万円)に対する根保証の極度額は、根抵当による保全が図られていない部分に限定し、36百万円から26百万円に減額することとした。