国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し
◎対象となる国税関係書類の範囲の拡充
契約書・領収書等については、金額の記載のあるものでその金額が3万円未満のものがスキャナ保存の対象とされていますが、この金額基準が撤廃され、全ての契約書・領収書等がスキャナ保存の対象とされました。
契約書・領収書等については、重要な書類として、スキャナで読み取る前の紙段階で行われる改ざんの問題点等を踏まえ、「適正事務処理要件」を新たに設けることにより事務担当者間でチェック機能を働かせる仕組み(担保措置)が講じられます。
◎適正事務処理要件の新設
国税関係書類の作成又は受領からスキャナでの読み取りまでの各事務について、その適正な実施を確保するために必要なものとして次に掲げる事項に関する規程を定めるとともに、これに基づき処理することが要件に加えられました。
(1) 相互に関連する各事務について、それぞれ別の者が行う体制(相互けん制)
具体的には、取引の承認、取引の記録等に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互けん制が機能する事務処理の体制がとられていることが必要とされるものです。
(2) 当該各事務に係る処理の内容を確認するための定期的な検査を行う体制及び手続(定期的なチェック)
具体的には、定期的に事務処理手続きのチェック・検査を行う仕組み(体制、手続)がとられていることが必要とされるものです。
(3) 当該各事務に係る処理に不備があると認められた場合において、その報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制(再発防止)
具体的には、検査等を通じて問題点が把握された場合に、経営者を含む社内幹部に情報が速やかに報告されるとともに、原因究明や改善策の検討、必要に応じて手続規定等の見直しがなされる体制がとられていることが必要とされるものです。
◎入力要件の緩和(業務処理サイクル方式の見直し)
入力要件について、業務処理サイクル方式で行う場合に必要とされる「電磁的記録等による保存制度の承認要件」は、スキャナ保存制度の利用が進まない大きな一因とされており、上記の「適正事務処理要件」が新たに設けられたことから、廃止することとされました。
◎電子署名要件の廃止
スキャナで読み取る際には、入力を行う者又はその者を直接監督する者の電子署名を行った上でタイムスタンプを付すことが要件とされていましたが、電子署名が不要とされ、電子上のものに限定しない形で「国税関係書類に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと」が新たに要件とされました。
なお、タイムスタンプにはある時点から電子データが変更等されていないことが確認できる性能を有しているため、引き続きタイムスタンプを付す用件が存置されています。
◎大きさ情報・カラー保存要件の見直し
重要書類以外の一般書類(見積書、注文書等)について、スキャナで読み取った際の書類の大きさに関する情報の保存を必要とする要件を不要とするとともに、カラーでの保存を不要とし、グレースケール(いわゆる「白黒」)での保存でも要件を満たすこととされました。
◎適用関係
これらの改正は、平成27年9月30日以後に提出する申請書に係る国税関係書類について適用し、同日前に提出した申請書に係る国税関係書類については、従前どおりとされています。
保存義務者がスキャナ保存の承認を受けようとする場合には、スキャナ保存をもって国税関係書類の保存に代える日の3ヶ月前の日までに申請書を提出することとされていますので、平成27年9月30日に申請書が提出された場合には、平成28年1月1日から改正後の制度によるスキャナ保存を行うことができることとなります。