国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し
◆電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し
電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供※」と位置付け、その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準(内外判定基準)を、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を受ける者の住所等とする見直しが行われました。
これにより、国内に住所等を有するものに提供する「電気通信利用役務の提供」については、国内、国外いずれからの提供を行っても国内取引となります。なお、国内事業者の国外支店等が当該役務の提供を受けた場合でも、消費税の内外判定は、役務の提供を受けた者の住所等により判定しますので、その役務の提供は国内取引に該当することとなります。
※「電気通信利用役務の提供」とは、電気通信回線を介して行われる電子書籍や音楽、ソフトウエア等の配信のほか、ネット広告の配信やクラウドサービスの提供、さらには電話や電子メールなどを通じたコンサルタントなどが該当します。なお、電話、FAX、インターネット回線の接続など、通信そのものに該当する役務の提供などは除かれます。
◆課税方式の見直し(「リバースチャージ方式」の導入)
国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」については、「事業者向け電気通信利用役務の提供※」とそれ以外のものとに区分されます。
消費税法においては、課税資産の譲渡等を行った事業者が、当該課税資産の譲渡等に係る申告・納税を行いますが、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が、「特定課税仕入れ」として申告・納税を行う、いわゆる「リバースチャージ方式」が導入されます。
ただし、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合に、リバースチャージ方式により申告を行う必要があるのは、一般課税により申告する事業者で、その課税期間における課税売上割合が95%未満の事業者に限られます。
なお、課税売上割合が95%以上の事業者や簡易課税制度が適用される事業者は、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合であっても、経過措置により当分の間、その役務の提供にかかる仕入れはなかったものとされますので、その課税期間の消費税の確定申告では、当該仕入れは課税標準額、仕入控除額のいずれにも含まれません。
※「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものが該当することとされています。役務の性質から該当するものとしては、例えば、インターネットを介した広告の配信やインターネット上でゲームやソフトウエアの販売場所を提供するサービスなどがあります。取引条件等から該当するものとしては、例えば、クラウドサービス等の電気通信利用役務の提供のうち、取引当事者間において提供する役務の内容を個別に交渉し、取引当事者間固有の契約を結ぶもので、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなものなどがあります。
◆国外事業者から受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る仕入税額控除の制限
電気通信利用役務のうち「事業者向け電気通信利用役務の提供」以外のもの(便宜的に「消費者向け電気通信利用役務の提供※」)については、当該役務の提供を行った事業者が消費税の申告・納税を行いますが、国外事業者から提供を受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」は、当分の間、仕入税額控除ができないこととされています。
ただし、登録国外事業者(「消費者向け電気通信利用役務の提供」を行う課税事業者である国外事業者で、国税庁長官の登録を受けた事業者)から提供を受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、仕入税額控除を行うことができます。
※「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、「電気通信利用役務の提供」のうち「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当しないものをいい、例えば、広く消費者を対象に提供されている電子書籍・音楽・映像の配信等や、ホームページ等で事業者を対象に販売することとしているものであっても、消費者をはじめとする事業者以外の者からの申込みが行われた場合に、その申込みを事実上制限できないもの等が該当します。
◆適用開始時期
平成27年10月1日以後行われる課税資産の譲渡等及び課税仕入れから適用されます。