国税関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し
◆スキャナ保存制度の概要
国税に関する法律の規定により保存をしなければならないこととされている書類(国税関係書類)の保存をしなければならない者(保存義務者)は、国税関係書類の全部又は一部について、所轄税務署長等の承認を受けたときは、一定要件に従い、スキャナにより記録された電磁的記録を保存することをもって、その国税関係書類の保存に代えることができることとされています。
スキャナ保存制度の対象となる書類の範囲については、特に重要な文書と考えられる決算関係書類(棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類)を除く国税関係書類です。
◆平成28年度税制改正におけるスキャナ保存制度の見直しの概要
(1) 国税関係書類の読み取りを行う装置に係る要件の緩和
国税関係書類の読み取りを行なう装置(スキャナ)について、「原稿台と一体となったもの」に限定する要件を廃止することとされました。
※「スキャナ」とは、原稿をデジタル画像にデータ変換する入力装置を指し、デジタルカメラやスマートフォン等の機器も含まれます。
(2) 受領者等が読み取りを行う場合の手続の整備
◎ タイムスタンプに係る要件の整備
国税関係書類(契約書、領収書等の重要書類に限る)を作成・受領する者(以下、受領者等)が読み取りを行う場合には、その国税関係書類に受領者等が署名を行った上で、その作成・受領後、特に速やかにタイムスタンプを付さなければならないこととされました。
※「特に速やか」にタイムスタンプを付すことが求められる期間については、「国税関係書類の作成・受領から3日以内」が基本となるものと考えられます。
◎ 読み取りを行った際に保存すべき国税関係書類の大きさに関する情報の整備
スマートフォン等による読み取りにあっては大きさに関する情報の保存に対応できないケースもあることから、国税関係書類の受領者等が読み取りを行う場合には、その書類の大きさが日本工業規格A列4番以下であるときに限り、大きさに関する情報の保存を要しないこととされました。
◎ 相互けん制要件の緩和
適正事務処理要件のうち、国税関係書類の受領者等が読み取りを行う場合における相互けん制要件については、作成・受領事務と読み取り事務をそれぞれ別の者が行なうこととする要件が不要とされ、これに代え、受領者等以外の別の者が国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の確認を行う(必要に応じて原本の提出を求めることを含む)ことが要件とされました。
※適正事務処理要件とは、内部統制を担保するために、相互けん制、定期的なチェック及び再発防止策を社内規定等において整備するとともに、これに基づいて事務処理を実施していることです。
(3) 相互けん制要件に係る小規模企業者の特例
起業したばかりで従業員が少ない事業者など、小規模で経理に人員や時間を割くことが難しく、作成・受領や読み取り等の各事務において、それぞれ別の者を充てることができない事業者がスキャナ保存制度の適用を受けることが可能となるように、小規模企業者に該当する保存義務者にあっては、定期的な検査について税理士・税理士法人等の税務代理人に行なわせることとしている場合に、相互けん制要件を不要とすることとされました。
※「小規模事業者」とは、中小企業基本法に定めるものであり、具体的には、常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については5人)以下の事業者をいいます。
(4) 適用関係
上記の改正は、平成28年9月30日以後に提出する申請書に係る国税関係書類について適用し、同日前に提出した申請書に係る国税関係書類については、従前どおりとされています。
※保存義務者がスキャナ保存の承認を受けようとする場合には、スキャナ保存をもって国税関係書類の保存に代える日の3ヶ月前の日までに申請書を提出することとされており、平成28年9月30日に申請書が提出された場合には、平成29年1月1日から改正後の制度によるスキャナ保存を行うことができることとなります。