簡易裁判所の「支払督促」について
◆金銭未払いに関するトラブルを解決する法的手段
金銭の未払いに関するトラブルを解決するための法的な手段には、「民事訴訟(「少額訴訟」を含む)」のほかにも、「民事調停」や「支払督促」といった手続があります。それぞれの手続の主な概要は以下の通りです。
*民事訴訟・・・裁判官が法定で双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図ります。
*少額訴訟・・・60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる訴訟で、1回の審理で判決が言い渡されます。
*民事調停・・・裁判所の調停委員会のあっせんにより、話し合いによる解決を図るもので、調停で合意された内容は判決と同様の法的効力が生じます。
*支払督促・・・申立人の申立てに基づいて裁判所書記官が金銭の支払いを求める制度で、相手方からの異議の申立てがなければ判決と同様の法的効力が生じます。
◆「支払督促」の主な特徴
簡易裁判所が受け付ける民事事件の件数を種類別にみると、民事訴訟(少額訴訟を含む)の次に多いのが、全件数の約3割を占める「支払督促」です。
「支払督促」は、家賃の滞納や売掛金の未払い、賃金の未返済などの金銭の紛争に対して、申立人の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に金銭の支払いを命じる制度で、書類審査のみで迅速に解決を図ることができます。主な特徴は、以下の通りです。
◎書類審査のみの手続き
書類審査のみで行われる手続で、利用者が訴訟などのように裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要がありません。そのため、申立人にとっては、支払督促申立書に必要事項を記入し、手数料と相手方に書類を送るための郵便切手などを添えて、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に直接または郵送で提出すれば済むなど、民事訴訟や少額訴訟、民事調停に比べて簡単に行うことができます。
※申立書は、簡易裁判所に備え付けてあるほか、裁判所ホームページからもダウンロードできます。
◎裁判所に納める手数料が、訴訟の半分
支払督促の手数料は、訴訟の半分です。例えば、100万円の支払いを求める場合、裁判所に納める手数料は、民事訴訟では10,000円ですが、支払督促では半分の5,000円になります。
◎申立人の申立てのみに基づいて、裁判所書記官が金銭の支払いを命じます
申立書を受理した簡易裁判所書記官が申立書の内容を審査し、申立ての主張から請求に理由があると認められる場合には、裁判所書記官が金銭の支払いを命じる支払督促を発付して、相手方に送達します。
◎強制執行の申し立て
発付された支払督促を送っても、相手方がお金を支払わず、異議申し立てもしない場合、申立人は支払督促に対して仮執行宣言を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。
◎相手方が異議申し立てをした場合
相手方が支払督促により申立人に金銭の支払いを行えば、紛争は解決されますので、支払督促手続はその段階で終了します。一方で、相手方が支払督促に納得がいかない場合、支払督促を受領後、簡易裁判所に異議を申し立てることができ、異議申立てが受理されると支払督促は失効し、民事訴訟の手続に移行します。民事訴訟は、紛争の金額が140万円以下の場合は簡易裁判所で、140万円を超える場合は地方裁判所で行われます。
◆「支払督促」を受けた場合は
支払督促は簡易裁判所から、「特別速達」という特別な郵便で送付され、原則として郵便局員から名宛人に直接手渡されます。放置していると、そのまま手続が進み強制執行を受けてしまうことがありますので、支払督促を受け取ったら、すぐに内容を確認します。
内容に不服があり、異議申立てを行う場合は、支払督促に同封されている「異議申立書」に必要事項を記入し、支払督促の送付元である簡易裁判所に直接または郵送で提出します。