「無期転換ルール」への必要な対応などは
◆無期転換ルールとは
◎ルールの概要
同一の使用者との間で締結した有期労働契約で、平成25年4月1日以降に開始したものについて、更新して通算契約期間が5年を超えた場合、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換するルールです。平成25年4月1日から5年を超える平成30年4月1日以降、多くの有期労働契約で働く方に無期転換申込権の発生が見込まれています。
◎対象となる方
無期転換ルールの対象は、有期労働契約で働く全ての方々です。契約社員、アルバイト、派遣社員などの名称は問わず、定年後に引き続き雇用される嘱託社員など、高齢の方も対象となります。
◎通算期間のカウントと無期転換の申込み
通算5年のカウントは、平成25年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象です。例えば、平成24年10月1日から1年間の契約を反復更新した場合は、平成25年10月1日以降の契約期間から力ウントし、平成30年10月1日の契約更新から無期転換の申込権が発生します。
無期転換の申込みは、通算契約期間が5年を超えた有期労働契約の初日から末日までの間に行うことができます(無期転換の申込みをしない場合は、引き続き有期労働契約)。労働者が無期転換の申込みをすると、会社がそれを承諾したものとみなされるため、会社は断ることができません。無期労働契約は申込時に成立しますが、その開始日は「申込時の有期労働契約が終了する日の翌日から」となります。
◆事業者がやるべきことは
無期転換後の労働条件(職務の内容、勤務地、賃金、労働時間など)は、会社の就業規則や労働契約などで「別段の定め」がない限り、直前の有期労働契約と同じ労働条件となります。そのため、別段の定めを行うか否かも含め、無期転換後の労働条件を検討し、就業規則などの規定を整備する必要があります。特に定年など、有期契約労働者に通常は定められていない労働条件を適用する場合は、適切に設定の上、あらかじめ明確化しておく必要があります。
また、円滑な導入を図るため、制度の検討時から労使で協議することや、無期労働契約への転換の申込みができることを、事前に有期労働契約で働く方に説明することも重要です。
なお、無期転換後の労働条件を検討するに当たり、「別段の定め」を行う場合、就業規則などの規定を整備する必要がありますが、無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されないにも関わらず、無期転換後の労働条件を以前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではありません。
◆無期転換ルールへの対応に当たっての注意点
無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありません。雇止めが有効か否かは、労働契約法第19条の「雇止め法理」に基づき判断され、有期労働契約が次の①、②のいずれかに該当する場合に、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、その雇止めは無効とされ、以前と同じ労働条件で、有期労働契約が更新されます。
①過去に反復更新され、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同じだと認められるもの
②労働者において、契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
◆無期転換ルールの特例
無期転換ルールの適用に当たっては、有期雇用特別措置法により、①専門的知識等を有する有期雇用労働者と、②定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者については、 都道府県労働局長の認定を受けることで、一定期間(①はプロジェクトに従事している期間、②は定年後引き続き雇用される期間)、無期転換申込権が発生しない特例が設けられています。
認定を受けるためには、本社を管轄する都道府県労働局に対し申請を行う必要があり、申請後、都道府県労働局において審査を行うため、申請から認定を受けるまでには一定期間を要します。
現在、この特例に係る申請が全国的に増加しており、認定を受けるまでには通常よりも時間がかかる場合があるため、全ての労働局において、平成30年3月末日までに認定を受けることを希望される場合は、平成30年1月までに申請するよう厚労省が呼びかけています。