民法等の一部を改正する法律(相続法の改正)の概要
◆配偶者の居住権を保護するための方策
◎配偶者短期居住権の創設
配偶者は、相続開始時に被相続人の建物(居住建物)に無償で住んでいた場合には、以下の期間、居住建物を無償で使用する権利(配偶者短期居住権)を取得する。
1.配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定する日までの間(ただし、最低6ヵ月間は保障)。
2.居住建物が第三者に遺贈された揚合や、配偶者が相続放棄をした場合には居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6ヵ月。
◎配偶者居住権の創設
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用又は収益を認めることを内容とする法定の権利を新設し、遺産分割における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができることとするほか、被相続人が遣贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることができることにする。
◆遺産分割に関する見直し等
◎長期間婚姻している夫婦聞で行った居住用不動産の贈与等を保護するための施策
婚姻期間が20年以上である夫婦の一方配偶者が、他方配偶者に対し、その居住用建物又はその敷地(居住用不動産)各遺贈又は贈与した場合については、民法第903条第3項の持戻しの免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割においては、原則として当該居住用不動産の持戻し計算を不要とする(当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算をすることができる)。
◎預貯金債権の仮払い制度の創設
1.預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和し、仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようにする。
2.家庭裁判所の判断を経なくても預貯金債権の一定額については、他の共同相続人の同意がなくても単独で金融機関の窓ロにおける支払を受けられるようにする。
◆遺言制度に関する見直し
◎自筆証書遺言の方式緩和
全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとする。ただし、財産目録の各頁に署名押印することを要する。
◎法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度を新たに設ける。なお、遺言書保管所に保管されている遺言書については、遺言書の検認は適用されない。
◆相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件の下で、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与) を創設する。
◆遺留分制度に関する見直し
遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行の規律を見直し、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ、受遺者等の請求により、金銭債務の全部又は一部の支払につき裁判所が期限を許与することができるようにする。
◆相続の効力等に関する見直し
特定財産承継遺言等により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことにする。
◆施行期日
原則として、公布の日(平成30年7月13日)から1年以内に施行(別途政令で指定)。
ただし、自筆証書遺言の方式緩和については、平成31年1月13日から施行。また、配偶者の属住の権利、法務局における遺言書の保管については、公布の日から2年以内に施行(別途政令で指定)。