新型コロナウイルスに関連する法人税の取り扱い
◆法人の期限の個別延長
新型コロナウイルスの影響により、法人がその期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、個別延長が認められます。
やむを得ない理由については、法人の役員や従業員等が新型コロナウイルス感染症に感染したケースだけでなく、外出を控えている方、在宅勤務等をしている方などがいることにより通常の業務 体制が維持できないことや、事業活動を縮小せざるを得ないこと、取引先や関係会社においても感染症による影響が生じていることなどにより決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども該当します。
また、上記のような理由以外であっても、感染症の影響を受けて期限までに申告が困難な場合には、個別に申告期限延長が認められます。
◎個別延長の場合の申告・納付期限
申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から 2 ヵ月以内の日を指定して申告・納付 期限が延長されます。
◎個別延長する場合の手続き
別途、申請書等を提出する必要はなく、申告の際、その申告書等の余白に「新型コロナウイルス による申告・納付期限延長申請」である旨を付記することで申請を行うことができます。
◆業績悪化による役員給与(定期同額給与)の減額
年度の中途における役員給与の減額改定については、業績悪化改定事由による改定に該当する場合、改定前に定額で支給していた役員給与と改定後に定額で支給する役員給与は、それぞれ定期同 額給与に該当し、損金算入することになります。
法人税の取扱いにおける「業績悪化改定事由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいい、新型コロナウイルスの影響により、業績等が急激に悪化してやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この業績 悪化改定事由に該当することになります。
また、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、役員給与の減額等と いった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性 が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが避けられない場合における減額改定は、業績悪化 改定事由による改定に該当します。
◆「災害損失欠損金」に該当する損失や費用
新型コロナウイルスの影響により、棚卸資産や固定資産などに損失が生じている場合や、感染症 の拡大や発生を防止するために必要な措置の費用を支出している場合、その損失や費用は「災害に より生じた損失の額」に該当し、「災害損失欠損金の繰戻し還付制度※」の対象となります。
例えば、・飲食業者等の食材の廃棄損、・感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品 等の除却損、・施設や備品などを消毒するために支出した費用、・感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用、・イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損などが、災害損失欠損金に該当します。 ※災害損失欠損金の繰戻し還付制度とは、災害のあった日から同日以後 1 年を経過する日までの 間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後 6月を経過する日までの間に終了する 中間期間において生じた災害損失欠損金額を、その災害欠損事業年度開始の日前 1 年 (青色申告 法人は前2年)以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税の還付を受けられる制度です。
◆取引先等の支援のために生じた費用や損失
法人が、新型コロナウイルスにより、売上の減少などで資金繰りが困難となっている取引先等の 支援を目的として、被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間)内に行う、債権の免除又は取引条件の変更、低利又は無利息による融資、見舞金の支出又 は事業用資産の供与若しくは役務の提供などをにより生じた費用や損失の額については、自然災害 時の取扱いと同様に、寄附金や交際費等に該当しないものとして取り扱われます。
◆企業が生活困窮者等に自社製品等を提供した場合
自社製品等の提供が、不特定又は多数の生活困窮者等を救援するために緊急、かつ、今般の感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであれば、その提供に要する費用(配送に係る 費用も含む)の額は、寄附金以外の費用として、提供時に損金算入できます。