所有者不明土地問題の解消に向けた民法等の改正などの概要
相続した不動産について相続登記がされていないケースが数多く存在していることから、所有者の把握が困難となり、まちづくりのための公共事業が進まないなどの所有者不明土地問題が顕在化しており、適切な管理がされていない空き家が増加している要因の一つとの指摘もされています。
◆相続登記の義務付けなどを盛り込んだ民法等の改正の概要
所有者不明土地の増加等の社会経済情勢の変化に鑑み、所有者不明土地の発生を防止するとともに、土地の適正な利用及び相続による権利の承継の一層の円滑化を図るため、「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が令和3年4月21日に成立しました。原則として、公布日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
◎民法等(民法、不動産登記法)の一部改正の概要
・境界標の調査のための隣地使用権に関する規定等を整備するとともに、電気等の継続的給付を受けるための設備設置権に関する規定等を創設する。
・所在等が不明な共有者がいる場合の共有物の変更又は管理に関する決定方法の特則、共有物の管理者に関する規定及び所在等が不明な共有者の不動産の共有持分の他の共有者による取得に関する特則等を創設する。
・所有者の所在等を知ることができない土地若しくは建物又はその共有持分及び所有者による管理が不適当である土地又は建物について裁判所が管理人による管理を命ずる規定等を創設する。
・相続財産の保存のための統一的な相続財産管理制度を創設するとともに、具体的相続分による遺産分割を求めることができる期間の制限の規定等を整備する。
・不動産の所有権の登記名義人が死亡し、相続等により所有権を取得した相続人に対して、相続開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権の移転登記の申請を義務付ける規定を創設するとともに、登記手続における申請人の負担軽減を図る規定(相続人申告登記制度、所有不動産記録証明制度の創設、登記の抹消手続の簡略等)を創設する。
◎相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の概要
・相続等により土地の所有権の全部又は一部を取得した者は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる制度を創設する。
◆相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置
令和3年度税制改正により、次の①、②の登録免許税の免税措置について適用期限が令和4年3月31日まで1年延長されるとともに、②の対象に一定の所有権の保存登記が追加されました。
①相続により土地を取得した個人が登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置
相続(相続人に対する遺贈を含む)により土地の所有権を取得した個人が、その相続による土地の所有権の移転登記を受ける前に死亡した場合に、その死亡した個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記は、登録免許税を課さないこととされています。
②少額の土地を相続により取得した場合の登録免許税の免税措置
個人が、土地について所有権の保存登記(不動産登記法第2条第10号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る)又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、その土地が相続登記の促進を特に図る必要がある一定の土地であり、かつ、その土地の登録免許税の課税標準となる不動産の価額が10万円以下であるときは、登録免許税を課さないこととされています。
◆所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題への対応
令和2年税制改正において、所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題に対応するため、次の①、②の措置が講じられました。
①現に所有している者の申告の制度化
・土地又は家屋について、登記簿上の所有者が死亡しており相続登記がされていない場合、現に所有している者(相続人等)に対して、各自治体が条例で定めるところにより、氏名、住所など固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとなりました。
・令和2年4月1日以後の条例の施行日から現所有者であることを知った者について適用します。
②使用者を所有者とみなす制度の拡大
・一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、使用者を所有者とみなして、事前に通知した上で固定資産課税台帳に登録し、その使用者に固定資産税を課することができることとします。
・令和3年度以後の固定資産税について適用します。