非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)
事業承継税制は、経営承継円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について贈与税や相続税の納税を猶予する制度で、非上場会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」があります。
◆法人版事業承継税制の概要
・法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度で、「一般措題」と「特例措置」があります。
・継続して納税猶予の適用を受けるには一定要件が課されており、①原則5年間の事業継続期間において代表権を有しなくなった場合や雇用の確保ができなかった場合(一般措置に限る)などに該当した場合には猶予税額の全部、②当該期間経過後にその適用を受ける株式等を譲渡するなどに該当した場合には猶予税額のうち譲渡等した株式等に対応する部分など一定の猶予税額について、それぞれ納税の猶予の期限が確定し、その税額と利子税を納付する必要があります。
※贈与税の納税猶予に係る贈与者が死亡した場合には、贈与税は免除されるとともに、納税猶予の適用を受けている非上場株式等は贈与時の価額により受贈者が相続等に取得したものとみなされ相続税が課されますが、一定の要件を満たしたときは、当該非上場株式等について相続税の納税猶予の適用を受けることができます。
◆「一般措置」と「特例措置」の主な違い
法人版事業承継税制には「一般措置」と、平成30年度税制改正において10年間の措置として創設された「特例措置」があり、基本的な仕組みは同様ですが、以下のような違いがあります。
①事前の計画策定等
両措置とも円滑化法の認定が必要ですが、特例措置は後継者や承継時までの経営見通し等を記載した「特例承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関の所見を記載の上、平成30年4月1日から令和5年3月31日までに都道府県知事に提出し、確認を受ける必要があります。
滑化法認定の申請時までは「特例承継計画」を提出することが可能です。
②適用期限
一般措置に適用期限はありませんが、特例措置は最初の贈与又は相続等による非上場株式等の取得について平成30年1月1日から令和9年12月31日まで間の取得が要件とされています。
③納税猶予の対象株数
一般措置は会社の発行済株式総数の2/3までとする上限が設けられていますが、特例措題に上限はなく、全株式が対象となります。
④納税猶予割合
一般措置は対象となる非上場株式等に対応する贈与税の100%、相続税の80%が猶予されますが、特例措置は、相続税・贈与税とも100%が猶予されます。
⑤承継パターン
一般措置の後継者は1人に限られますが、特例措置は最大3人の後継者が対象となります。
⑥雇用確保要件
一般措置は承継後5年間平均で贈与時又は相続時の雇用の8割を確保することが納税猶予の継続要件とされていますが、特例措置では雇用確保要件を満たすことができなかった場合に、その理由等を記載した報告書を都道府県知事に提出し、確認を受けることで納税猶予が継続できます。
⑦事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除
特例措置には、会社の事業の継続が困難な一定の事由が生じた場合に特例措置の適用に係非上場株式等を譲渡等したときは、その対価の額(譲渡等の時の価額の1/2が下限)を基に猶予税額を再計算し、その再計算した金額と一定の配当等の金額との合計額が当初の猶予税額を下回る場合には、その差額を免除するなどの措置が設けられていますが、一般措置に免除措置はありません。
◆合和3年度税制改正における相続税の納税猶予に係る後継者の役員要件の緩和
相続税の納税猶予の特例措置における後継者の役員要件について、後継者が被相続人の相続開始直前において認定承継会社の役員でないときであっても、①被相続人が70歳未満(改正前60歳未満)で死亡した場合、又は②後継者が経営承継円滑化法の確認を受けた特例承継計画に特例後継者として記載されている者である場合には、適用を受けることができるとされました。
なお、①については一般措置も同様に改正されます。