地域別最低賃金の大幅引上げに向けて中小企業が活用できる支援策
◆令和3年度地域別最低賃金における地方最低賃金審議会の答申のポイント
・47都道府県のうち、40都道府県が28円、4県(青森・山形・鳥取・佐賀)が29円、2県(秋田・大分)が30円、1県(島根)が32円の引上げ。
・答申された改定額の全国加重平均額は令和2年度から28円引上げの930円となり、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高の引上げ額。
・地域別の改定額では東京の1,041円が最も高く、神奈川の1,040円、大阪の992円と続く。
・答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和3年10月1日~8日までの間に順次発効される予定。
◆最低賃金の引上げに向けて中小企業が活用できる支援策
◎雇用調整助成金等の要件緩和
・業況特例又は地域特例の対象となる中小企業(令和3年1月8日以降解雇等を行っていない場合に限る)が、事業場内最低賃金(地域別最低賃金との差が30円未満である場合に限る)を令和3年7月16日~12月までの間に30円以上引上げた場合、令和3年10月~12月までの3カ月間の休業については、休業規模要件(1/40以上)を問わず支給します。
・当該引上げの実施日以降の休業について要件緩和が利用でき、雇用保険被保険者、被保険者以外ともに、緊急雇用安定助成金として申請を行います。
※令和3年度地域別最低賃金の発効日以降に賃金を引上げる場合は、発効後の地域別最低賃金から30円以上引上げる必要があります。
◎業務改善助成金の拡充
・事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資などを行う場合、引上げ額と引き上げる労働者の数に応じ、その設備投資などに要した費用の一部を助成する制度で、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が30円以内及び事業場規模100人以下の事業場が対象です。
・令和3年8月から、「45円コース」の新設や、同一年度内の複数回申請が可能となりました。
・また、売上高等の直近3カ月間の月平均が前年又は前々年同月に比べて30%以上減少している事業者を対象として、賃金引上げ対象人数に「10人以上」が増設され、助成上限額が600万円に拡大されたほか、賃金引上げ額を30円以上とする場合に生産性向上に資する自動車やパソコン等が補助対象に追加されました。
◎事業再構築補助金の拡充
・新型コロナの影響が長期化する中で、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編等の思い切った事業再構築に取り組む中小企業等を支援する制度で、補助額は通常枠で最大8千万円、補助率2/3となります。
・第3回公募(7月30日~9月21日)から最低賃金の引上げに向けた支援策として、令和2年10月から令和3年6月までの間に3ヵ月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が10%以上いること及び令和2年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少している事業者について、補助率を3/4に引上げ、採択率を優遇する「最低賃金枠」が創設されました。
◎中小企業が賃上げを行った場合の所得拡大促進税制
青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。なお、控除額は法人税額(個人事業主は所得税額)の20%が上限となります。
【令和3年3月31日以前に開始される事業年度(個人事業主は令和3年以前)の要件等】
・雇用者給与等支給額が前年度よりも増加し、かつ継続雇用者(前年度から適用年度までの全ての月分で給与等の支給を受けている雇用保険の一般被保険者)の給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%を税額控除。
・継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、上乗せ措置として25%を税額控除。
【令和3年4月1日以後に開始される事業年度(個人事業主は令和4年以後)の要件等】
・雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合に、雇用者給与等支給額の対前年度増加額の15%を税額控除。
・雇用者給与等支給額の対前年度増加率が2.5%以上であり、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、上乗せ措置として25%を税額控除。