欠損金が生じた場合の「繰越控除」と「繰戻還付」の概要
◆欠損金の繰越控除の概要
確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年)以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます。
◎繰越控除をする法人等
欠損金の繰越控除をする法人は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人です。
欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度について提出した確定申告書が白色申告書であっても、その欠損金額についてはこの繰越控除の規定が適用されます。
◎繰越控除される欠損金額
繰越控除される欠損金額は、各事業年度開始の日前10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)以内に開始した事業年度において生じた欠損金額です。
ただし、この欠損金額からは、この繰越控除の規定の適用を受けようとする事業年度前の各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入された欠損金額および「欠損金の繰戻しによる還付」の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となった欠損金額は除かれます。また、損金の額に算入される欠損金額は、欠損金の繰越控除の規定を適用せず、かつ、法人税法第59条第2項(会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入)、同条第3項および第62条の5第5項(現物分配による資産の譲渡)の規定を適用しないものとして計算した場合におけるその事業年度の所得金額を限度とします。
例えば、繰越欠損金が150万円で、その事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合、150万円のうち100万円が損金に算入され、その事業年度の所得金額は0となります。
なお、中小法人等(※)以外の法人の各事業年度における控除限度額は、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額に対して一定の率を乗じた金額とされており、平成30年4月1日以降開始事業年度については50%となります。
※普通法人のうち、資本金等の額が1億円以下であるもの(大法人の100%子法人等を除く)または資本もしくは出資を有しないもの、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等をいいます。
◎損金算入の順序
繰越欠損金がその事業年度開始の日前10年(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)以内に開始した事業年度のうち2以上の事業年度において生じている場合には、最も古い事業年度において生じたものから順次損金算入をします。
◆欠損金の繰戻還付の概要
青色申告書である確定申告書を提出する事業年度(適格合併における被合併法人の青色申告書である確定申告書を提出する最後事業年度を含む)に欠損金額が生じた場合において、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求できるという制度です。
この制度は、①清算中に終了する各事業年度の欠損金額、②解散等の事実が生じた場合の欠損金額、③中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金額を除き、適用が停止されていますが、以下についても適用が認められています。
◎災害損失欠損金の繰戻しによる還付
災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度または災害のあった日から同日以後6ヵ月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額(※)がある場合には、その事業年度または中間期間開始の日前1年(青色申告である場合には前2年)以内に開始したいずれかの事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付を請求することができることとされています。
※災害により棚卸資産、固定資産または一定の繰延資産について生じた損失の額(保険金、損害賠償金等により補てんされるものを除く)をいいます。
◎新型コロナ税特法の特例
令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、中小企業者等に加え、資本金等の額が10億円以下の法人等も制度の適用が認められます。