改正電子帳簿保存法に伴う「電子取引」への対応はお早めに
令和4年1月から施行された電子帳簿保存法の改正により、請求書や領収書等をメールで受領する場合やウェブサイトからダウンロードする場合など、電子データで取引情報の授受を行う「電子取引」については、一定要件に従って電子データのまま保存しなければならないこととされましたが、対応が困難な事業者の実情に配意し、令和5年12月までに行う電子取引については、引き続き出力した書面等による保存を認める宥恕措置が講じられています。
令和6年1月以後に行う電子取引については、出力した書面等による保存は認められないため、未対応の事業者は要件に従った電子データの保存を行うための準備が必要です。なお、電子取引に対応した市販ソフトウェア等を導入することで電子データの保存などを効率的に行うことができます(機能要件を満たす製品にはJIIMAの認証マークが付されています)。
◆電子取引の取引情報に係るデータの保存要件など。
電子取引とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、具体的には、いわゆるEDI取引や、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)、インターネット上のサイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます。電子取引データの保存等は、真実性や可視性を確保するため、次の要件を満たす必要があります。
☆次のいずれかの改ざん防止措置を行うこと。
①タイムスタンプが付された後の授受、②授受後、速やかにタイムスタンプを付す、③データの訂正・削除の記録が残るシステム又は訂正・削除ができないシステムを利用して授受及び保存を行う、④訂正・削除の防止に関する事務処理規定の備付け。
☆電子計算処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発プログラムを使用する場合)。
☆電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びに操作説明書を備え付け、電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにする。
☆電子取引データについて、次の検索機能を確保すること。
①取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索条件として設定できること、②日付又は金額に係る記録項目について、範囲を指定して条件を設定できること、③二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること。
※前々事業年度の売上高が1,000万円以下の事業者であって、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに対応できる場合には、検索機能の確保は不要です。
◆Q&A
Q.保存が必要となる電子データとは?
A.書面でやりとりしていた場合に保存が必要な情報が含まれる電子データを受領・送付した場合に、電子データを一定要件を満たした形で保存する必要があります。例えば、電子メールで請求書の情報をやりとりした場合や、ウェブ上で行った取引に関する領収書の情報がサイト上でのみ表示される場合に、電子データを保存する必要があります(PDFやスクリーンショットによる保存も可)。
Q.改ざん防止措置や検索機能の確保はどのような方法で行う必要がある?
A.改ざん防止措置には「タイムスタンプ付与」や「訂正・削除の履歴が残るシステムの利用」といった方法以外にも「改ざん防止のための事務処理規程を定めて運用する」方法でも構いません(国税庁HPに事務処理規程のサンプルが公表されています)。また、検索機能については専用のソフトウェア等を導入していない場合でも、表計算ソフトで取引年月日・取引金額・取引先の情報を入力して索引簿を作成する方法や、取引データのファイル名に規則性をもって取引年月日・取引金・取引先を入力して特定のフォルダに集約しておく方法でも対応が可能です。
Q.電子取引で受け取った取引情報と同じ内容のものを書面でも受領した場合は?
A.書面を正本として取り扱うことを自社内等で取り決めている場合には、当該書面の保存のみで足ります。ただし、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれている場合等は、書面及び電子データの両方を保存する必要があります。
Q.インターネットバンキングを利用した振込等は、電子取引に該当する?
A.取引情報の正本が別途郵送されるなどの事情がない限り、電子取引に該当しますので、振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等が記載されたデータ(又は画面)をダウンロードする又は印刷機能等によってPDFファイルを作成するなどの方法によって保存する必要があります。