年末調整で「所得金額調整控除」の適用を受ける場合の留意点等
◆所得金額調整控除の概要
令和2年分以後の所得税から基礎控除や給与所得控除などの見直しとともに「所得金額調整控除」が創設されました。所得金額調整控除には、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」(以下「所得金額調整控除(子ども等)」)と、「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」(以下「所得金額調整控除(年金等)」)があり、いずれも確定申告により適用できますが、「所得金額調整控除(子ども等)」は年末調整でも適用を受けられます。
◎「所得金額調整控除(子ども等)」の概要
その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、①本人が特別障害者(※1)に該当する、②年齢23歳未満の扶養親族(※2)を有する、③特別障害者(※1)である同一生計配偶者(※3)を有する、④特別障害者(※1)である扶養親族(※2)を有する、のいずれかに該当する場合には、給与等の収入金額(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額(最高15万円)が、給与所得の金額から控除されます。
※1特別障害者とは、障害者控除における特別障害者と同様です。
※2扶養親族とは、居住者と生計を一にする親族で、合計所得金額が48万円以下の方。
※3同一生計配偶者とは、居住者と生計を一にする配偶者で、合計所得金額が48万円以下の方。
◎「所得金額調整控除(年金等)」の概要
その年の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が10万円を超える場合には、給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円)及び公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)の合計額から10万円を控除した残額が、給与所得の金額(「所得金額調整控除(子ども等)」の適用がある場合は適用後の金額)から控除されます。
◆年末調整において「所得金額調整控除(子ども等)」の適用を受ける場合の留意点等
年末調整において「所得金額調整控除(子ども等)」の適用を受ける場合は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに「所得金額調整控除申告書」を給与等の支払者に提出する必要があり、以下のような留意点等があります。
【適用要件の判定時期】
23歳未満の扶養親族を有するかどうかなどの判定は、「所得金額調整控除申告書」を提出する日の現況により判定することとなります。なお、判定の要素となる所得金額は申告書を提出する日の現況により見積もった合計所得金額によることとなり、年齢はその年12月31日(その申告書を提出する時までに死亡した者については、その死亡の時)の現況によることとなります。
【2か所以上から給与等の支払を受けている場合の給与収入の判定】
給与等の収入金額が850万円を超えるかどうかについては、年末調整の対象となる主たる給与等(「扶養控除等申告書」を提出している方に支払う給与等)により判定します。したがって、年末調整の対象とならない従たる給与等(主たる給与等の支払者以外が支払う給与等)は含めません。
※確定申告において「所得金額調整控除(子ども等)」の適用を受ける方が、2か所以上から給与等の支払を受けている場合は、それら全ての給与等を合計した金額により判定することとなります。
【給与収入が850万円を超えるかどうかが明らかではない場合】
給与等の収入金額が850万円を超えるかどうかが明らかではない場合でも、年末調整において所得金額調整控除の適用を受けようとするときは、「所得金額調整控除申告書」に必要事項を記載し、給与等の支払者に提出します。なお、給与収入が850万円を超えなかった場合は、申告書を提出したとしても、所得金額調整控除が適用されることはありません。
【共働き世帯における所得金額調整控除(子ども等)の適用】
同じ世帯に所得者が2人以上いる場合、扶養控除のように、いずれか一の者の扶養親族にのみ該当するものとみなす規定はないため、いわゆる共働きの世帯で、扶養親族に該当する23歳未満の子がいる場合、夫婦の双方で所得金額調整控除の適用を受けることができます。
【年末調整後に扶養親族の異動があった場合の再調整】
給与等の収入金額が850万円を超える方が年末調整後、その年12月31日までの間に子が生まれた場合、所得金額調整控除の要件を満たすため、その年分の源泉徴収票を給与等の支払者が作成するまでに、異動があったことについて申出があった場合は、年末調整の再計算をして税額を還付できます。なお、確定申告によって税額の還付を受けることもできます。