退職手当等を受けた場合の所得税の取扱い
退職手当等は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払らわれるものであることなどから、税負担が軽くなるよう取扱いが優遇されています。
◆課税退職所得金額の計算方法
退職所得の金額は、原則として、退職手当等の収入金額から勤務年数に応じた退職所得控除額を差し引いた残額に1/2を乗じた金額となります。
ただし、特定役員退職手当等(役員等として勤務した期間が5年以下である者が支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもの)に該当する場合は、平成25年分以後、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を差し引いた額が退職所得金額となり、1/2課税の適用はありません。
また、短期退職手当等(短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないもの)に該当する場合は、令和4年分以後、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分について、1/2課税の適用は受けられないこととされました。
※短期勤続年数とは、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、勤務年数については役員等として勤務した期間がある場合、その期間を含めます。
〇一般退職手当等
課税退職所得金額⇒(収入金額-退職所得控除額)×1/2
〇特定役員退職手当等
課税退職所得金額⇒収入金額-退職所得控除額
〇短期退職手当等
【収入金額-退職所得控除額が300万円以下の場合】
課税退職所得金額⇒(収入金額-退職所得控除額)×1/2
【収入金額-退職所得控除額が300万円を超える場合】
課税退職所得金額⇒150万円+{収入金額-(300万円+退職所得控除)}
◆退職所得控除額の計算方法
退職所得控除額は、次のように計算します。なお、前年以前に退職手当等の支払いを受けている場合や、同一年中に2か所以上から支払いを受ける場合などは、計算が異なることがあります。
〇勤続年数20年以下の場合
退職所得控除額⇒40万円×勤続年数 ※80万円に満たない場合は80万円
〇勤続年数20年超の場合
退職所得控除額⇒800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※勤続年数に1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算します。
※障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記により計算した金額に100万円を加算した金額となります。
◆税額の計算方法
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算し、退職所得金額に応じた所得税及び復興特別所得税の額を求めます。
なお、退職手当等の支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、退職手当等の支払者が所得税額等を計算し源泉徴収するため、原則として確定申告は必要ありません。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、退職手当等の支払金額から20.42%の所得税等が源泉徴収されますので、確定申告を行い所得税等を精算します。
以下、課税退職所得金額=A、税率=B、控除額=Cとする。
〇Aが195万円以下
B=5%、C=0円
税額=(A×5%)×102.1%
〇Aが195万円超 330万円以下
B=10%、C=97,500円
税額=(A×10%-97,500円)×102.1%
〇Aが330万円超 695万円以下
B=20%、C=427,500円
税額=(A×20%-427,500円)×102.1%
〇Aが695万円超 900万円以下
B=23% C=636,000円
税額=(A×23%-636,000円)×102.1%
〇Aが900万円超 1,800万円以下
B=33% C=1,536,000円
税額=(A×33%-1,536,000円)×102.1%
〇Aが1,800万円超 4,000万円以下
B=40% C=2,796,000円
税額=(A×40%-2,796,000円)×102.1%
〇4,000万円超
B=45% C=4,796,000円
税額=(A×45%-4,796,000円)×102.1%