「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の概要
内閣官房と公正取引委員会は、労務費の転嫁に関する発注者及び受注者の採るべき行動/求められる行動を取りまとめた「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表しました。
◆発注者として採るべき行動/求められる行動の概要
【1.本社(経営トップ)の関与】
・1労務費の上昇分について取引価格への転嫁を受け入れる取組方針を具体的に経営トップまで上げて決定すること、2経営トップが同方針又はその要旨などを書面等で社内外に示すこと、3取組状況を定期的に経営トップに報告し、必要に応じて経営トップが更なる対応方針を示すこと。
【2.発注者側からの定期的な協議の実施】
・受注者から労務費の上昇分に係る取引価格の引上げを求められていなくても、業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回など定期的に労務費の転嫁について発注者から協議の場を設けること。・協議することなく長年価格を据え置くことや、スポット取引と称して協議することなく価格を据え置くことは独禁法又は下請法上、問題となるおそれがある。
【3.説明資料を求める場合は公表資料とすること】
・労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合は、公表資料
※に基づくものとし、受注者が公表資料を用いて提示する価格は、合理的な根拠があるものとして尊重すること。・公表資料に基づくものに加えて詳細な資料や内部情報を求め、これらが示されないことにより明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは独禁法又は下請法上、問題となるおそれがある。
※公表資料とは、*最低賃金やその上昇率、*春季労使交渉の妥結額や上昇率、*公共工事設計労務単価(国交省)における関連職種の単価や上昇率、*毎月勤労統計調査(厚労省)における賃金指数や給与額、上昇率、*ハローワークの求人票や求人情報誌における同業他社の賃金など。
【4.サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと】
・サプライチェーン全体での適切な価格転嫁による適正な価格設定を行うため、受注者がその先の取引先との取引価格を適正化すべき立場にいることを意識して、要請額の妥当性を判断すること。
・受注者が取引先から労務費の転嫁を求められたため、発注者に協議を求めたにもかかわらず、明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは独禁法又は下請法上、問題となるおそれがある。
【5.要請があれば協議のテーブルにつくこと】
・受注者から労務費上昇を理由に取引価格の引上げを求められた場合は、協議のテーブルにつくこと。労務費の転嫁を求められたことを理由に取引を停止するなど不利益な取扱いをしないこと。
・労務費の上昇分の価格転嫁であるという理由で協議のテーブルにつかないことにより、明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは独禁法又は下請法上、問題となるおそれがある。
【6.必要に応じ考え方を提案すること】
・
受注者からの申入れの巧拙にかかわらず受注者と協議を行い、必要に応じて算定方法の例をアドバイスするなど労務費上昇分の価格転嫁に係る考え方を提案すること。
・発注者が示す算定方法以外は受け入れないことにより、明示的に協議することなく一方的に通常の価格より著しく低い単価を定めることは独禁法又は下請法上、問題となるおそれがある。
受注者として採るべき行動/求められる行動の概要
【1.相談窓口の活用】
・労務費上昇分の価格転嫁の交渉の仕方について、国・地方公共団体、支援機関(全国の商工会議所・商工会等)の相談窓口などに相談するなどして積極的に情報を収集して交渉に臨むこと。
【2.根拠とする資料】
発注者との価格交渉において使用する労務費の上昇傾向を示す根拠資料は、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額や上昇率などの公表資料(発注者としての行動の3を参照)を用いること。
【3.値上げ要請のタイミング】
・労務費上昇分の価格交渉は、業界の慣行に応じて1年に1回など定期的に行われる価格交渉のタイミング、業界の定期的な価格交渉の時期など受注者が価格交渉を申し出やすいタイミング、発注者の業務の繁忙期など受注者の交渉力が比較的優位なタイミングなどの機会を活用して行うこと。
【4.発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示】
・発注者から価格を提示されるのを待たずに受注者側からも希望する価格を発注者に提示すること。価格の設定は、自社だけでなく自社の発注先やその先の取引先における労務費も考慮すること。
発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動の概要
・1定期的にコミュニケーションをとること、2価格交渉の記録を作成し