外国人旅行者向け免税制度の抜本的な見直し(案)
◆外国人旅行者向け免税制度の見直しの背景
外国人旅行者向け免税制度は、税務署長の許可を受けた輸出物品販売場(いわゆる免税店)が免税購入対象者に対して免税対象物品を一定の方法で販売する場合に、消費税が免除される制度です。
近年、免税購入物品が国外に持ち出されず国内での横流しが疑われる事例が多発しており、免税購入者は出国時に税関へ旅券を提示しなければならないが、多額の不正を行おうとする者は旅券提示を回避するなどにより、税関検査を逃れているのが実態。また、免税店においては疑わしい者への免税販売を避けるために、やむを得ず免税販売自体を停止する事業者も出てきています。
外国人旅行者向け免税制度の不正利用を排除し、免税店が不正の排除のために負担を負うことのない制度とするため、出国時に持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度とし、確認後に外国人旅行者に消費税相当額を返金する「リファンド方式」に見直すことなどが令和7年度税制改正大綱に盛り込まれました。
◆改正の概要
◎免税方式の見直し(リファンド方式)
・免税店は外国人旅行者等の免税購入対象者に物品を販売する際、消費税相当額を含めた価格で販売し、出国時に税関で持出しが確認された場合に免税店を経営する事業者から免税購入対象者に対して消費税相当額を返金する「リファンド方式」に見直す。
※承認送信事業者等に委託することを想定。
・免税購入対象者は免税店での購入から90日以内に税関の持ち出し確認を受けなければ免税とならないこととし、90日以内に持ち出しが確認できないときは、免税販売管理システムを通じて、購入記録情報ごとに持ち出しが確認されなかった旨の情報を提供する。
◎免税販売要件の見直し
・現行の免税対象物品は、輸出するため購入される物品のうち通常生活の用に供する物品(金又は白金の地金や事業用又は販売用として購入されることが明らかな物品は対象外)であり、一般物品(家電、バッグ、衣料品等)は販売合計額が5千円以上、消耗品(飲食料品、医薬品、化粧品その他の消耗品)は販売合計額が5千円以上50万円以下の金額基準(同一店舗1日あたりの基準)があるが、リファンド方式への見直しに伴い、次のように要件を見直す。
①一般物品と消耗品の区分を廃止する。
②消耗品について、同一店舗1日あたりの購入限度額(50万円)及び特殊包装を廃止する。
③対象物品の要件である「通常生活の用に供するもの」を廃止し、通常生活の用に供するかどうかの判断を不要にする。
※金地金等の不正の目的で購入されるおそれが高い物品については、免税販売の対象外とされる物品として個別に定める。
◎新制度の適正な運用のための措置等
・高級時計等のすり替え防止のため、税抜100万円以上の免税品について、商品を特定するための情報(シリアルナンバー、ブランド名、型番等)を国税庁に提供することとする。
・免税店での購入後に郵便局等から免税品を別送できる取扱いについて、廃止する。
※店舗から直接海外に配送する直送制度の仕組みは、所要の規定の整備を図った上で引き続き存置。
◎免税店の許可要件の緩和等
・リファンド方式への見直しに伴い、一般型免税店、委託型免税店の区分を撤廃する。
・委託型免税店において免税手続を委託できる範囲(特定商業施設:建物毎、商店街毎)の縛りを緩和し、免税店で購入した日と同一の日に免税手続できるカウンター(承認免税手続事業者)に対して、免税手続の委託を可能とする。
◎在外邦人の確認要件の緩和
・在外邦人(国外に2年以上居住する者)について、既存の証明書類から地番の記載を不要とし、購入記録情報に一定の事項を加えて送信することを要件とした上で、証明書類の保存も不要とするなどの要件緩和を行う。
◆適用時期
上記の改正は令和8年11月1日以後の免税対象物品の譲渡等について適用する。ただし、別送に関する取扱いは令和7年3月31日をもって廃止する。