事業承継税制(贈与時)における後継者の役員就任要件等の見直し
◆事業承継税制における後継者の役員就任要件等の見直し
・令和7年度税制改正大綱では、令和9年(2027年)12月末までの時限措置である法人版事業承継税制の特例措置について、同特例措置を適用して後継者が非上場株式等の贈与を受ける場合に、後継者は「贈与の日まで3年以上継続して役員等であること」とする要件により令和6年12月末までに役員に就任している必要がありましたが、この役員就任要件の見直しを行い「贈与の直前において役員等であること」とします。
・また、令和10年(2028年)12月末までの措置である個人版事業承継税制についても同様の見直しを行い「贈与の日まで3年以上継続して事業等に従事していること」とする事業従事要件を
「贈与の直前において事業等に従事していること」とします。
・上記の改正は、令和7年1月1日以後の贈与について適用します。
◆事業承継税制の概要
事業承継税制は、経営承継円滑化法に基づく認定のもと、法人や個人事業の後継者が取得した一定の資産について贈与税や相続税の納税を猶予する制度で、非上場会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」があります。
◎法人版事業承継税制
・後継者である受贈者相続人等が経営承継円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと納税を猶予し、後継者の死亡等により猶予されている贈与税・相続税が免除される制度です。
・本制度には適用期限のない「一般措置」と、事業承継を集中的に進めるため平成30年度税制改正で10年間(平成30年~令和9年)の時限措置として創設された「特例措置」があります。
・本制度の適用を受けるためには、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受け、報告期間中(原則として贈与税又は相続税の申告期限から5年間)は代表者として経営を行う等の要件を満たす必要があり、その後は、後継者が対象株式等を継続保有すること等が求められます。
·贈与税の納税猶予中に贈与者が死亡した場合、猶予されていた贈与税は免除された上で、贈与を受けた株式等を贈与者から相続等により取得したものとみなして相続税が課税されます(贈与時の
価額で計算)。その際、都道府県知事の確認を受けることで相続税の納税猶予ができます。
・「一般措置」と「特例措置」の基本的な仕組みは同じですが、以下のような違いがあります。
一般措置 | 特例措置 | |
事前の計画策定等 | 不要 | 令和8年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県知事に提出 |
適用期限 | なし | 令和9年12月31日までの贈与・相続等 |
対象株数 | 総株式数の最大2/3まで | 全株式 |
納税猶予割合 | 贈与:100%相続:80% | 100% |
承継パターン | 複数の株主から1人の後継者 | 複数の株主から最大3人の後継者 |
雇用確保要件 | 承継後5年間で平均8割の雇用維持が必要 | 未達成の場合でも猶予継続可能 |
◎個人版事業承継税制
・青色申告に係る事業(不動産貸付業等を除く)を行っていた個人事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた者が、令和10年12月末までの贈与又は相続等により、特定事業用資産を取得した場合に、青色申告に係る事業の継続など一定要件のもと、その特定事業用資産に係る贈与税・相続税の全額の納税を猶予し、後継者の死亡など一定事由により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納税が免除される制度です。
・適用を受ける場合は令和8年3月末までに「個人事業承継計画」を都道府県知事に提出し、確認を受ける必要があります。
・制度の対象となる「特定事業用資産」とは、先代事業者(贈与者・被相続人)の事業の用に供されていた1宅地等(400m2まで)2建物(床面積800m2まで)3建物以外の減価償却資産(固定資産税の課税対象とされているものや、自動車税軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの、その他一定のもので、贈与又は相続等の日の属する年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていた資産をいいます。