インボイス制度の負担軽減措置に関する概要とQ&A
令和5年度税制改正大綱では、令和5年10月1日から実施される消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)について、インボイス発行事業者となる免税事業者に係る税負担軽減措置や、事業者の事務負担軽減措置が盛り込まれました。
◆小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
免税事業者からインボイス発行事業者になった場合の消費税の納税額を売上税額の2割とする3年間の税負担軽減措置を講じます。
Q.具体的な適用対象者は?
A.具体的には、*免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受けて登録日から課税事業者となる者、*免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者が対象となります。なお、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1千万円を超える場合などインボイス発行事業者の登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合や、課税期間を1か月又は3か月に短縮する特例の適用を受ける場合は、2割特例の対象外となります。
Q.適用できる期間は?
A.令和5年10月1日~令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。例えば、令和5年10月1日から登録を受ける場合、個人事業者は令和5年(10~12月分のみ)~令和8年分の申告まで、法人(3月決算の場合)は令和6年3月決算分(10月~翌3月分のみ)~令和9年3月決算分までの申告が適用対象となります。
Q.適用を受けるためには手続きが必要?
A.適用に当たっては事前の届出は必要なく、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することで適用を受けることができます。また、消費税の申告を行うたびに2割特例の適用を受けるかどうかの選択が可能です。ただし、申告する課税期間が2割特例の適用対象となるか否かの確認が必要となります。例えば、令和8年分の申告について、2年前(基準期間)の令和6年における課税売上高が1千万円を超える場合、2割特例は適用できません。
◆一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)
税込1万円未満の課税仕入れ(経費等)について、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる6年間の事務負担軽減措置を講じます。
Q.適用対象者は?
A.基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1億円以下又は特定期間(個人は前年1~6月、法人は前事業年度の開始の日以後6ヵ月)における課税売上高が5千万円以下の事業者が対象となります。
※特定期間における5千万円の判定に当たり、課税売上高による判定に代えて給与支払額の合計額の判定によることはできません。
Q.適用できる期間は?
A.令和5年10月1日〜令和11年9月30日までが適用期間となり、その間に行う課税仕入れが適用対象となります。そのため、令和11年10月1日以後に行う課税仕入れは課税期間の途中であっても、少額特例の適用はありません。
Q.例えば、9,000円の商品と8,000円の商品を同時に購入した場合、少額特例の対象になる?
A.少額特例の判定単位は、課税仕入れに係る1商品ごとの金額ではなく、一回の取引の合計額が税込1万円未満であるかどうかにより判定します。そのため、合計17,000円の取引となることから対象外です。
◆少額な返還インボイスの交付義務免除
税込1万円未満の返品・値引き割戻しなどの売上げに係る対価の返還等について、返還インボイスの交付義務を免除する恒久的な事務負担軽減措置を講じます。
Q.適用対象者は?
A.すべての事業者が適用対象となります。
Q.売り手が負担する振込手数料も対象になる?
A.売り手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合には、返還インボイスの交付義務免除の対象となります。