売掛金の回収・管理は事業継続のための重要業務
◆トップの売掛金に対する強い姿勢
売掛金(売掛債権)とは、商品や製品・サービスに対し現金決済ではなく、代金を回収していない状態をいい、事実上お金を貸しているのと同じですから、売上を伸ばす努力と同じように売掛金をしっかり回収しなければなりません。
トップが売上を伸ばすことだけに力を入れていれば、営業を始め社員は売上高を競う方向に走り、売掛金回収が疎かになります。また、金融機関もキャッシュフローを重視しており、売掛金回収を疎かにしている企業は金融機関から信用を得ることができません。
ですからトップが、売上とともに回収にも強い姿勢を示すことで、与信管理や得意先管理事務を確立するとともに、取引先に対しても売掛金の回収に厳しい企業であることを認識してもらい支払いの優先順位を上げます。
◆得意先の売掛金管理システムを作る
得意先ごとに売掛金残高の同行を把握するために例えば、「売掛金管理台帳」を作成し、取り決めた締め日や支払日・支払方法及び与信限度額などを備考欄に記入しておけば、実際の支払い状況などを簡単にチェックすることができます。決められた日に請求書を確実に発行し、支払日に必ず集金または振り込みを確認します。
また、得意先の信頼を得るために、※注文通り納品が行われ納品書控が経理に回っているか、※値引きや返品処理が迅速に行われているか、※クレームがあった場合どのように処理したか、※営業担当の裁量値引きなどが経理に伝わっているか等、営業や納品担当と連携して処理します。
◆支払いや振り込みが遅れたり入金額が少ないときは
これまで取り決め通りに売掛金が回収されていた得意先からの支払いが遅れている場合は、納品ミスや値引きなど当方の事務処理に問題がなかったかを確認します。
なお、遅れが繰り返されるようになった場合は、資金繰りの悪化等の原因が考えられるので、集金日や振込日の前に電話で確認するようにします。また、営業担当者が情報収集を行い(信用調査会社の活用も検討)対応を協議します。
◆債権回収で重要なこと
まず、なぜ支払ってもらえないかを把握し、回収すべき債権と回収の見込み、それに伴う費用や時間を考慮した上で、回収手段を決めます。突然の内容証明郵便などは、相手側を逆撫ですることになりかねず、支払う意思があった場合でも、揉める原因となりますので、まずは話し合いで解決を図る努力が重要です。
◆売掛金の時候が迫っている場合
◎消滅時効……商品の代金の時効は2年間ですから、売掛金の権利を行使しないと、権利が消滅します。消滅時効の起算は、原則、期限の到来したとき(支払期日)から計算します。支払期日を定めていない場合は、商品やサービスを相手に提供した日が起算日となります。
ただし、消滅時効の期間が過ぎても、債務者が債権者に対して時効の完成を主張しなければ、権利は消滅しません。この債務者が時効の完成を主張することを「時効の援用」といいます。
◎時効の中断……時効期間が迫っている場合、債権者がアクションを起こすことにより、時効のリセットすることができます。時効が中断した日から新たに時効が始まります。
まずは、「内容証明郵便」を利用して債務者に支払の請求(催告)をすることで時効を6ヶ月間延ばします。その間に裁判上の請求(訴訟など)や債務者から残高確認書をもらう、一部を支払ってもらうなどで債務があることを承認させれば時効が中断します。支払う意思を表示しなかった場合は、支払督促の申立てや「少額訴訟制度」を利用するなど、法的措置を検討します。
※延長された6ヶ月の間に内容証明郵便を繰り返し通知しても再延長はありません。
◎消滅時効になった場合……時効期間が過ぎた債権でも、債務者に時効を主張されていない場合は、債権の権利は消滅していないので、請求して回収することができます。その際に、一部で返済してもらえれば、債務を承認したことになり、その日から新たに時効が始まります。