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知って得する経営塾 第528号『認知症高齢者事故の最高裁判決』

 
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認知症高齢者事故の最高裁判決             弁護士 谷原 誠
 
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こんにちは。
 
弁護士の谷原誠です。
 
先日、認知症の高齢者を介護するご家族にとって
 
重要な最高裁判例が出ました。
 
 
事件は、愛知県大府市で、2007年12月に起きた、
 
徘徊症状がある認知症の男性(91)が
 
JR東海の電車にはねられ死亡する事故が発生した件に関し、
 
同社が男性の親族に対して損害賠償訴訟を提起しておりました。
 
 
第一審判決は、JR側の請求通り720万円の支払を命じ、
 
第二審の名古屋高裁は、男性の妻に対して、359万円の支払を命じました。
 
この件に関する最高裁判決が2016年3月1日に出されました。
 
最高裁は、逆転判決として、親族の賠償責任を否定しました。
 
法律では、物事の是非善悪を判断する能力がない人が
 
他人に損害を与えても、本人には損害賠償請求ができないことになっています。
 
しかし、その無能力者を監督する法定の義務がある人は、
 
その無能力者に代わって損害賠償責任を負います。
 
 
そこで、今回、争われたのが、この認知症の男性を介護している
 
妻や長男ら親族が、この損害賠償義務を負うのか、という点です。
 
第一審、第二審の裁判所は親族の責任を認めましたが、最高裁は否定しました。
 
 
その理由としては、
 
(1)同居の妻や長男というだけでは、「法定の」監督義務者とは言えない。
 
(2)衡平の見地から、「法定の監督義務者」と同視して
  賠償義務を負担させることが相当である場合には賠償義務者といえる。
 
(3)それは、第三者に対する加害行為の防止に向けた
  監督義務を引き受けたと認められる場合である。
 
(4)では、それは、どのように判断するかというと、以下の要素を検討します。
 
 
・監督している人の生活状況や心身に状況
 
・精神障害者との親族関係の有無・濃淡
 
・同居の有無その他の日常的な接触の程度
 
・精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情
 
・精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容
 
・これらに対応して行われている監護や介護の実態
 
 
この観点からすると、同居しているだけの場合や

介護を行っている、というだけでは賠償責任は否定されることになります。
 
 
たとえば、過去に徘徊して他人に迷惑をかけたことから、
 
そのようなことがないよう責任を持って監督するため、
 
同居して日常介護し、徘徊できないように常時監視したり、
 
施錠をしたりしている親族が、その監督を怠ったような場合に
 
責任が認められることになるのではないか、と思います。
 
 
痴呆症の高齢者を抱えるご家族が、
 
それだけで責任を負うような判決が出てしまうと、
 
高齢者の在宅介護は怖くてできない、ということにもなりかねません。
 
 
この最高裁判決は、今後ますます増加するであろう
 
認知症の高齢者の在宅介護をする親族に対し、
 
一定の配慮をした判断だったものと思います。
 
 
 
◆◇◆ みらい総合法律事務所 弁護士 谷原 誠 プロフィール ◆◇◆ 
 
      https://www.ecg.co.jp/about/mirai.php?mm=528
 
 
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